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ハドラー(ダイの大冒険) まさかアリゾナ州出身のプロ野球選手にハドラーがいるとはね。 -- 名無しさん (2013-08-19 12 28 29) 魔族って嫌いだけど(最初はキライだった)こいつはまさに漢になっていましたね。最後のアバン先生との再開も本当に粋な計らいで。アルビナスの気持ちが本当にわかった。 -- 名無しさん (2013-10-19 22 08 30) やっぱりギガストラッシュを喰らった時のセリフはいつ見てもグッとくる -- 名無しさん (2013-10-22 20 59 20) ここまでかっこいい負け台詞を知らない -- 名無しさん (2013-10-22 21 12 14) 俺は今demo -- 名無しさん (2013-10-24 02 56 18) ヒムに「自分に似ている」といっていたが彼はギャグ方面に行きそうなんですが・・・。 -- 名無しさん (2013-10-24 11 29 23) ↑まぁ仲間になってたらああなってたかもな。魔王の頃からドジ要素はあったし -- 名無しさん (2013-10-24 11 39 54) 超魔生物になってからはマジで格好良すぎる -- 名無しさん (2013-11-11 16 56 17) いっそ仲間になって欲しかったが彼自身に限界があったのでヒムに託したのかな? -- 名無しさん (2013-11-11 17 45 03) よくコラ素材になってるから気になってた。ダイ読んでみるわ -- 名無しさん (2013-11-11 19 08 45) ↑×2 「もうバーンには従えないが、アバンを殺してしまった自分がダイ達の仲間になることはできない」と言ってる。多分この時既に勝敗はどうでも良く、ダイ達の捨て石になるつもりだったのかもしれない。(ヒムの事は既に気付いていたのかも) -- 名無しさん (2013-11-29 16 28 21) 最期にアバン先生に会えてよかった。本気で泣いた。 -- 名無しさん (2013-11-29 17 32 43) 力入ってる記事だなw -- 名無しさん (2014-01-25 15 11 42) 本編かっこいいが最近はハドラーどうなってるの?のコラシリーズで笑う日々 -- 名無しさん (2014-02-19 07 49 53) この人の存在だけでダイ大が読みたくなったな。 -- 名無しさん (2014-03-30 22 45 01) ハドラー「変身して超魔になると呪文が使えなくなるからダメだ。肉体から根本的に改造する」→呪文を使ったのはほんの数回。基本的に肉弾戦。 -- 名無しさん (2014-05-01 09 54 33) 後半の名台詞をぜひとも青野さんの声で聴きたかったな -- 名無しさん (2014-05-25 22 36 06) ハドラーはホントかっこよくなったよな 終盤で株上げまくり -- 名無しさん (2014-07-02 23 56 04) ベタな感想かもしれないけれど、ポップのために初めて人間の神に祈るシーン本当に好き。 -- 名無しさん (2014-07-03 00 44 47) 超魔生物後ばかり評価されてるけど自分は前半の方も好きだな。強力なオリジナル技が幅を利かせる中で格闘能力とDQ由来の呪文だけで強キャラポジでいるのはよかった。 -- 名無しさん (2014-07-13 02 58 41) 前半悪役、後半武人。最後の最後で部下に恵まれた魔族。 -- 名無しさん (2014-07-13 09 57 44) ↑6その数回の中の一回が◇9でダイとポップを救うための「急げ…ポップ! 骸が動いたのだ…儲けものと思え!!」のシーンなんだが・・・ -- 名無しさん (2014-07-25 08 08 52) ↑×3バルジ島でのヒュンケルとの一騎打ちは名勝負だと思う。 -- 名無しさん (2014-07-25 08 28 49) ダイコロってオモチャのCMじゃダイにゲームで負けて顔芸を披露するという凄まじい小物ぷりを披露してたな。後に武人になるとは当時誰もが思ってなかっただろうね。 -- 名無しさん (2014-09-05 20 09 11) ↑10気持ちはわかるが人ではないよ。魔族ね。 -- 名無しさん (2014-09-05 21 19 24) アルビナスの気持ちは気づいていたようでほっとした。 -- 名無しさん (2014-09-05 21 29 12) 最後に読者の涙腺を破壊する魔王…いや漢。 -- 名無しさん (2014-09-05 21 31 19) ハドラーの魂がヒムの受け継がれたといえば、ヒムはプロモーションで強化復活したけど、彼の場合、ポーンがクイーン並みの力を得たと言うよりは、本来なれないはずのキング(ハドラー)にプロモーションしたと考えて良いのかな。ブロックが本来できないはずのチェック(王手)中のキャスリングが可能だった例もあるし -- 名無しさん (2014-11-03 21 37 07) ヒムは魂と一緒に鼻水属性も受け継いだのだ・・・ -- 名無しさん (2014-11-05 00 29 04) やっぱりアバン先生に看取られて逝った事に泣いたけれどほっとした。これで彼も後悔をすることなく・・。 -- 名無しさん (2014-11-16 22 30 16) これがあるから後のヒム対決からの加入の展開にもより一層燃える -- 名無しさん (2014-11-16 22 52 20) 終盤の超魔ハドラーを倒すにはどうすればいいか? 1.ミストバーンをぶつける。2.ダイ・バラン(竜魔人)・バーン・キル・ロン・ベルク・ヒュンケルをぶつける。3.マァムと老子、ポップとマトリフの閃華裂光拳とメドローアのワンチャンに賭ける。4.寿命尽きるまで逃亡する。 -- 名無しさん (2014-11-16 23 13 53) ↑↑↑武人になってからはアバンを殺してしまった(と思っていた)事をめっちゃ後悔してるんだよね。ライバルであり友のいない虚しさを痛感したんだろうな。 -- 名無しさん (2014-12-03 00 15 16) 精神面で覚醒し超魔生物の能力を最大まで引き出しても、竜魔人には遠く及ばないんだな・・・ -- 名無しさん (2014-12-03 00 20 31) ポップの名言、 -- 名無しさん (2014-12-20 20 38 41) ↑(誤送信)、ポップの名言でもある、閃光のように生きた人物の代名詞なんだよなぁ。ポップとハドラーの作中での成長ぶりはすごい。 -- 名無しさん (2014-12-20 20 42 01) 普通なら消し炭になっていたであろうカイザーフェニックス喰らってアバンがあの程度のダメージで済んだのは、やはりこれもハドラーの灰が守ってくれたからだったのかも…!! -- 名無しさん (2014-12-20 20 48 49) ハドラーの漢ぶりが勝るのに反比例するようにキルバーンやミストバーンが狡猾でろくでなくなっていったからな。 -- 名無しさん (2014-12-22 08 50 53) この項目観てるだけで涙腺緩んだ。 -- 名無しさん (2015-01-12 20 22 11) アバンはハドラーとの因縁がいろいろあったせいか、死んだ後もハドラーについて言ってる事は結構辛辣だよね。でもやはり評価すべきところは評価しているという(しかも超魔生物時はほとんど知らないにも関わらず)、この2人は本当の意味で宿敵でありライバルだったんだろうね。 -- 名無しさん (2015-02-12 15 19 49) ポップと言いハドラーと言い精神的にも実力的にも成長していく良いキャラだよなあ -- 名無しさん (2015-02-12 15 41 36) これ、今、超魔生物化した話をするとしたら、声優は誰になるだろう? やっぱり、大塚さん(明)かな? -- 名無しさん (2015-02-28 12 24 45) ↑あ、超魔生物化してからの話、でした; すいません; -- 名無しさん (2015-02-28 12 25 16) 武人となった超魔ハドラー時代でも、人類軍拠点への先制奇襲攻撃や大魔王の消耗を見逃さないなど合理的な戦法は躊躇なく取るのよね。そこのところが、まだ子供じみた勇者一行に立ちはだかる大人の壁、って印象の魅力があったかな -- 名無しさん (2015-04-03 11 54 49) 「情は捨てろ、冷徹になれ…」というエールは後に完璧に的確だった事が証明されてるんだよな(マァムがミストバーンに情けを掛けたせいでエライ目に遭ってるし、ダイとポップが下手な情けを捨てて冷徹(クール)にならなければ真バーンには勝てなかった) -- 名無しさん (2015-11-29 01 06 06) 序盤の鼻垂れ魔王の時もある意味では魅力的な悪役だったんだけど、まさかこんなにカッコ良くなるなんて思わなかったから当時は泣いた泣いた。ダイやポップ達主人公側のみならず、敵側の成長まで見せてくれるとは……。以降、ハドラーより好きな悪役が出てこない。彼は今でも俺のNo.1。 -- 名無しさん (2016-02-10 22 28 35) 大人になるとヘタレなハドラーの気持ちがよく分かる、けど必ず漢ハドラーのようになってみせる -- 名無しさん (2016-02-10 23 03 41) なまじ始めがゲスでヘタレな分、終始一貫してクールな武人よりもかっこよく感じるな -- 名無しさん (2016-02-26 23 19 30) アバン先生は敵にも味方にも評価されているけど、ハドラーにしてみれば「アバンの凄さは俺が一番知っている」と言えるほどアバン先生に拘っている。 -- 名無しさん (2016-03-02 00 28 29) 超魔生物化後がピックアップされがちだけど、バルジ島でのヒュンケルとの一騎打ちは名勝負だと思う -- 名無しさん (2016-03-05 20 15 45) 自分は超魔生物になる前のハドラーの方が好きだ -- 名無しさん (2016-03-27 01 21 30) 黒の結晶は人間で言うところの人口ペースメーカー的な役割でもあったんだろうな。バーンも悪辣だった頃のハドラーなら容赦なく爆破しただろうけど、武人になった後のハドラーにはちょっとだけ(悪いことをしてしまったな)と思ってるかも…。「地上をくれてやる」と言ってたのも嘘じゃなかったのかもしれん。 -- 名無しさん (2016-05-01 01 33 45) ↑ 死なせたくなくなったのは本当だと思うが魔界に太陽光の最終目的を考えたら「地上くれてやる」は所詮口約束だと思う 最終的にミストがハドラーよりバーンを選んだようにバーンも自分の目的を優先する 逆に言えばこの二人が躊躇するほどハドラーが急激に大成長したという事でもある -- 名無しさん (2016-07-23 19 46 57) 典型的なド悪党だったのにな。こんなに変わるとは思わないんだ。 -- 名無しさん (2016-08-07 15 30 33) 「人間の神よ!……」のセリフは、読んでて目頭が熱くなってくる……! -- 名無しさん (2016-08-17 14 56 41) 今だとハドラーの台詞がcv中田譲治さんで再生される。序盤の権力欲に凝り固まっていた時期でも、そして武人と化した」 -- 名無しさん (2016-09-04 21 59 27) ↑続き:武人と化した後でも違和感が無い。 -- 名無しさん (2016-09-04 22 00 29) 声が似てるってのもあるけど、山路和弘に一票 -- 名無しさん (2016-09-08 11 15 41) 個人的には大塚明夫かなぁ -- 名無しさん (2016-10-10 20 22 23) どんな立派な武人になったとしてもハドラーの魔王時代、本編当初の外道ぶり考えたとき、こいつの末路は某ガンダムでついこの間殺しあったのも忘れて場違いな決闘申し込んだ挙句撲殺された女性キャラのような最後でもよかったと思った俺は器が小さいのかな -- 名無しさん (2016-10-10 20 53 42) ↑あの世界観は味方も敵も狂ってる。だが余計に軍人としては全うだったあの人は生き残れない。ダイ大だからこそ出来たんだよ -- 名無しさん (2016-10-13 18 37 18) 武人化はライバルとしては昇華したんだけど悪役としては魅力ゼロになった・・・超魔生物化する前のハドラーの方が好きなのは自分だけではないはず -- 名無しさん (2016-10-16 21 09 22) 武人化以降は保身の心は元より人間への悪意バーンや魔王軍の事を度外視して「アバンの弟子達と決着をつける事のみ」を生きる糧にしているからなあ。超魔生物になった時点で先が長くない事も理解していたのかもね。後のヒム同様悪ではなくなった。 -- 名無しさん (2016-10-17 00 50 46) 魔王時代、魔軍司令時代でも相当な強さであったのは言うまでもない。魔剣ヒュンケルと渡り合う格闘能力に極大呪文で遠距離から攻撃可能とバランスが取れている。惜しむらくは呪文無効化される相手ばかりだったこと…。あとやられる度にメンタルが弱くなっていくのはリアルだな。力は魔軍司令時代が上でも魔王時代の方が恐らく強いはずである。 -- 名無しさん (2016-10-18 01 48 18) ↑魔王時代、ミストバーンと渡り合える老師の攻撃に耐えてたしな キルバーンを倒したアバン先生の全盛期時代と互角だったわけだし -- 名無しさん (2016-11-09 23 21 41) ↑2 魔王時代に感じなかった職場でのストレスとプレッシャーは大きいな 魔軍司令と言われても実際は針のムシロだったし それをバネにして成長したのは見事 -- 名無しさん (2016-11-16 23 16 59) ↑5 バーンに最後通牒を突きつけられた後でまた失敗した以上、悪役としてのハドラーはあの時点で死んだのだと思う。あれ以前と以後で別人と思っておいた方がいい気もするな -- 名無しさん (2016-12-09 20 15 09) 彼を連想するとアークデーモンはドラクエ11にて出るかな -- 名無しさん (2016-12-10 17 58 03) お色気シーンが多いダイの大冒険の中で確か唯一の入浴シーンが有るキャラ -- 名無しさん (2017-01-03 20 34 16) ↑6ポップやマトリフに呪文で渡り合おうとしたり、相手の得意フィールドでやり合うシーンが多くて不覚を取ってるのも惜しいところ。後のシグマに受け継がれる騎士道精神が悪い方に作用してる。 -- 名無しさん (2017-01-22 22 14 04) ↑9 そういう見方も面白いな。人(?)として成長したからこそ、ヘイトが集まりにくくなるかぁ。 -- 名無しさん (2017-01-23 00 02 04) 今だとハドラーの台詞がcv中田譲治さんで再生される 星とドラクエのCMでのハドラーが譲治だった… -- 名無しさん (2017-04-12 14 39 08) かつての悪行思い出すと小物になり下がったまま惨めな末路を迎えるというのも見たかった気がする。まあ武人としてのあの最期も好きですけどね -- 名無しさん (2017-04-12 20 46 54) ハドラーの地肉と化していた→血肉、なので変更お願いします。 -- 名無しさん (2017-05-08 20 48 09) ラーハルトと彼の母親が憂き目見た遠因 しかしそれがあったからこそ「くれてやるぞ俺の命」につながったと考えると・・・ -- 名無しさん (2017-05-08 21 18 41) ポップと逃げ遅れたときのやりとりは、読んでて、本当に涙が出てきそうになる(つ_; -- 名無しさん (2017-07-30 11 32 34) よく「アバン先生が生きていたのは蛇足」と聞くけれど、アバン先生がハドラーを看取るシーンは名シーンだからアバン先生が生きていたのは良かったと思うよ。ハドラーも満足して逝けたわけだし…… -- 名無しさん (2017-08-27 00 26 06) ↑まぁ、「人間の神というのも」以下の妙にメタい発言も不思議と違和感なく感動できたし、良かったと思うよ。 -- 名無しさん (2018-03-03 23 19 14) 一番上の人マジか キルバーンってサッカー選手がいるのは知ってるが(ちなみにこっちとは逆に審判にはめられている) -- 名無しさん (2018-03-04 00 11 03) アバン先生とハドラーは因縁の関係だし、あのままホップをなんとか外に出して死ぬのも悪くなかったけど、最後の最期でアバンと再会して腕の中で逝けたのはよかったことだと思う -- 名無しさん (2018-03-04 00 58 06) 魔王時代のハドラーを今見ると、似合わないコスプレ(但し本人はノリノリ)してるように見えるw -- 名無しさん (2018-05-09 13 39 48) ポップ「敵に説教かましたらメンタル克服した上にパワーアップして立ちふさがってきた」 修羅場である -- 名無しさん (2019-01-01 13 50 25) ロンが「魔族は人生長いからだらだら生きるヤツが多い」と言ってるし、バーンやハドラーみたいに野心や覇気に満ちた魔族は実は珍しいんだろうな。魔王時代にバーンに見込まれて救われたのもその覇気を買われたためだったようだし。 -- 名無しさん (2019-01-31 13 20 13) フローラを『魔界の神』に捧げると言ったり、魔界のモンスターを詰めた魔法の筒をもっていたり、おそらくデッド・アーマーと同じ材質と思われるキラーマシーンを開発したり、ヴェルザーの地上侵攻で竜の騎士が忙しくなったところを狙うように軍を起こしたりしているところを見ると、実は魔王時代からバーンとつながりがあったのかな? 明確な部下とは言わないまでも、下請け会社の社長みたいな感じで。 -- 名無しさん (2019-01-31 13 28 16) ↑人間界の魔物にとっては信仰対象が実在してたみたいな感じなのかもね。 -- 名無しさん (2019-01-31 13 51 29) ・小僧に手傷を負わされて撤退したと言う恥を隠さず、クロコダインに忠告する、クロコダインが負けると奴は六大軍団の中では最弱!等とは言わず、全軍でダイを叩こうとする(しかしバーンに邪魔される)バルトスの処刑は残当だし、結果論だがヒュンケルは実際裏切ったのでフレイザードに監視させてたのは正解。バランを外したのは明らかな采配ミスだが(バランに出世欲は無いし、ダイが居ようが居まいが当時のハドラーを圧倒していたのは明らかなのでバーンも上の役職につける気はない)はっきり言ってミストバーンが本気を出せばバルジ島でダイは全滅していたので、ミストの職務怠慢の方が・・・と、前半も言うほど無能ではないような -- 名無しさん (2019-10-03 21 22 59) ヒュンケルが救援に来る前のポップとマァムの前に現れたときは割と絶望感半端なかった -- 名無しさん (2019-12-21 19 10 11) 主人公のダイに加えてポップを「第二の主人公」というのはよく言われる事だけど、ハドラーもまた「第三の主人公」であり、魔物側の立場における「ダークヒーロー」だったと感じる。新しいアニメでも彼の生き様をしっかり描いて欲しい -- 名無しさん (2019-12-21 20 26 56) ↑3バランもバランでそもそも魔王陣営にいることが不自然な人物だからなぁ…ダイが引き金で勇者陣営に背信するリスクって下手すりゃあの6人の中で一番高いし -- 名無しさん (2019-12-24 22 31 48) 個人的にはギガストラッシュの際にダイとバランの姿が被った際はやる気満々なのに在りし日のアバンの姿が重なると「ゲェッ!」とらしくない悲鳴上げて心が折れてしまうの好き。ハドラーにとっての天敵はやっぱりバランではなくアバンだった的な。 -- 名無しさん (2020-01-07 19 48 27) 余命幾ばくもなくなったの下り、「無茶な超魔生物への改造が祟り~」っていうのはハドラーの勘違いで、実際は黒の結晶をつけたまま改造しちゃったせいで結晶が臨界寸前になっててそれの影響で血を吐いたりしてたんでしょ? -- 名無しさん (2020-02-20 10 47 19) ログ化を提案します -- 名無しさん (2020-04-02 04 13 43) ↑2両方だと思う。ザボエラが超魔生物は生命力を圧倒的に消費してしまうって言ってたし。(しかもザボエラはハドラーの黒の結晶についても知っていた) -- (名無しさん) 2020-10-03 16 39 38 なろう系主人公みたいな経緯でバーンに復活パワーアップさせてもらって、ベギラゴンも超魔生物化も他人から与えられた力なのに「必死に努力して」って持ち上げられるのは違和感大きい -- (名無しさん) 2020-10-04 07 58 35 仲間と共に互いを支え合い、必死に努力してってのはハドラー新鋭騎団結成以降の評じゃないかね 超魔生物になるために魔族の体を捨てた覚悟はポップも聞いてるんだし、何の努力もせずチート能力貰ったってのとは違うと思う -- (名無しさん) 2020-10-10 15 21 24 ハドラーが生み出したフレイザードも、残酷だけど人質を盾にする類いの事はしないし、手柄のためなら自分の命を削る覚悟があるなど、ハドラーの奥に秘められてた武人の気質の片鱗を受け継いでる -- (名無しさん) 2020-10-13 05 32 47 新アニメで声は野太くなったけど、「お前は大魔王の使い魔に成り下がった」と煽られてマジギレする辺りやっぱり中間管理職臭が -- (名無しさん) 2020-10-26 15 59 29 CV関智一は少しイメージ違うかなと思ったけど、終盤の熱い展開を前提にしてるなら凄くいいキャスティングな気がしてきた。あの人なら正々堂々とした武人ハドラーを上手く演じてくれそう -- (名無しさん) 2020-10-27 23 58 23 中の人が関さんなのもあって「燃え上がれ闘志~忌まわしき宿命を越えて」とか「我が心明鏡止水~されどこの掌は烈火のごとく」とかのワードがどうしても脳裏をかすめるw -- (名無しさん) 2020-10-30 12 33 09 〉RPGのタブーである「勇者が弱い内は弱い敵しか出してこない」を平然と破り、序盤の内から自ら勇者を始末しに来る。 ゲームで例えると、チュートリアルを終えたと思ったら前作ラスボスが何の前情報もなく襲ってくる感じか。 -- (名無しさん) 2020-11-02 12 59 41 ハドラーがダイ達の仲間になるのも普通はありえなかったよ。 -- (名無しさん) 2020-11-02 19 53 14 「敵上層部が最序盤から主人公を危険視し、その抹殺を決意する」ってのもかなり珍しい気がする。大体幹部一人か二人倒されてようやく本腰入れることが多いから -- (名無しさん) 2020-11-02 19 58 44 新アニメ見てて気づいたけど戦闘中にも関わらず空気読んでアバンに弟子との最後の別れをさせてあげる辺り小物時代からちゃんと武士の情けとかも持ち合わせていたんだな -- (名無しさん) 2020-11-06 19 04 25 序盤の内から自ら勇者を始末しに来るのはもともとdq4mp発売と同時に始まった企画(アベル伝説も同様)だからピサロを意識したのだろうか。もっとも当のピサロはもはや進化の秘法がいつでも魔族に戻れる後戻り可能な単なる必殺技と化してしまったのだが… -- (名無しさん) 2020-11-17 17 39 35 ハドラーの超魔生物化もピサロが元ネタなのかな? -- (名無しさん) 2020-11-17 19 09 16 ↑3ダイとポップを一度は見逃そうとしてるしな まあ自分の体に傷を付けたから、やっぱり見逃せないとなったが -- (名無しさん) 2020-11-19 18 37 57 【主な人間関係】にアバンを追記希望 -- (名無しさん) 2020-11-20 00 43 45 ↑4 いつでも戻れる必殺技になった進化の秘法、って無茶苦茶パワーダウンしてそうだな。制御できるようになった紋章のごとく… -- (名無しさん) 2020-11-20 07 25 10 [「閃光のように」発言だが、ハドラーの生き様もまんまこれが当てはまる -- (名無しさん) 2020-11-22 12 24 00 ↑誤送信失礼 「閃光のように発言がハドラーの生き様に当てはまる」というくだり、ハドラーは本来ならバーンやロンベルク同様長命の魔族だったものが、自ら選んで閃光のように生きて死ぬことを選ぶあたりがすごくエモい -- (名無しさん) 2020-11-22 12 26 10 獄炎の魔王を読んで思ったんだがブラスに関しては面影が変わり過ぎててブラスだと気付かなかったのかも -- (名無しさん) 2020-11-23 06 28 58 バーンにしてみれば余興にすぎないんだからしょうがないんだろうけど、「魔軍司令」のポジションが本当に足かせでしかなかったと思う。ハドラーは自分で最前線に立ちながら直接部下をグイグイ引っ張っていくタイプで、作戦室で遠くから指示だけ出すタイプじゃないもの。不適材不適所の極みのような人事。 -- (名無しさん) 2020-11-24 22 16 27 つっても当時のハドラー自身がその地位に固執しまくってるプライドとコンプレックスの塊みたいな人物だったし、尖兵にされて他のやつが司令だったら「俺は先代魔王で古株なのに」ってゴネ続けてたと思う -- (名無しさん) 2020-12-07 11 43 41 魔族の寿命からするとハドラーは魔王軍の中では新参じゃないか?というか実は作中の魔王軍自体が多分魔王軍の地上支社みたいなもので、魔王軍の本隊は魔界で待機しているんだと思う。同盟関係とはいえヴェルザー軍への押さえに魔界にもある程度戦力を置いておかないといけないし。バーンは地上を破壊した後は天界に攻め込む積もりだったらしいから -- (名無しさん) 2020-12-23 22 54 12 ↑フレイザードが「オレの人格には歴史がねぇ」なんて言ってたのもバーン軍においてはまだまだキャリアの浅いハドラーのコンプレックスを体現していたのかもな…内心は自分が魔軍司令の器でない、バーンの贔屓で今の地位に就けていると自覚していたんだろうな -- (名無しさん) 2021-02-02 00 24 42 ↑少なくとも自分より明らかに強いバランと、自分より地位が上のミストバーンが部下にいるのは自覚してたし、内心ビクビクで過ごしてたのは想像がつく。だからこそ保身に走って、それが裏目に出ると言う泥沼状態 -- (名無しさん) 2021-02-06 14 36 15 ↑いっそ魔軍司令ではなく一軍団長くらいの立場の方が元魔王のプライドは傷ついても生き生きとできたのかもしれんなぁ… -- (名無しさん) 2021-02-06 15 02 57 外伝のハドラー見ると本当に堂々としてて失態を犯した部下にも余裕がある。この時代が一番楽しかったんじゃないか -- (名無しさん) 2021-03-02 16 36 40 なんだかんだでアニメももうバラン編に入るし、超魔ハドラーも近づいてきてて楽しみだわほんと -- (名無しさん) 2021-03-03 20 46 37 「勝利のためにそれまでの自分とプライドを捨てる」ってかつてのフレイザードと同じ行動だけど、やっぱりその時の心持ちが明暗を分けたんだろうか。ミストバーンからの評価も正反対だし -- (名無しさん) 2021-03-03 21 28 04 まあハドラーは勝利にのみ固執してたかというと違うしな。最終戦ではダイがチャージしてる時、今仕掛ければ勝てるけどせっかく時間あるからこっちもチャージするわだったし。ダイに力勝ちしたいのであって結果的に勝てればなんでもいいやって意味ではないし -- (名無しさん) 2021-03-13 17 05 37 あの時点のハドラーは既に死に場所を探してる状態だしな -- (名無しさん) 2021-03-15 21 04 40 後にヒムちゃんが言った「死んでも勝ちたかったが、そんな真似をするくらいなら死んだ方がマシ」ってのがまさにその通りだったんだろう -- (名無しさん) 2021-04-09 14 08 40 殺伐とした上下関係に胃を痛くして、挫折を散々味わって、それでも腐りきらず立ち上がって一華咲かせて美しく散ったという、大人になってから魅力がわかる良いキャラクターだった。 -- (名無しさん) 2021-05-21 23 38 34 武神って何だ。DQで武神って言われると、TASのトルネコしか思い浮かばんw -- (名無しさん) 2021-05-28 19 07 30 魔王ハドラーの悪の大ボスというポジションも結構好き -- (名無しさん) 2021-08-16 22 42 50 ハドラーの灰がアバンを助ける。シグマが持ってた鏡がポップを助けてるあたり対比になってていいな。そしてラストでヒムは死なずに済んでよかった。 -- (名無しさん) 2021-08-21 15 44 13 超魔生物に改造したさいにザボエラが黒のコアを摘出していたらどうなっていたかな? -- (名無しさん) 2021-09-26 17 16 52 まあ武神はなんか違うよな -- (名無しさん) 2021-09-28 23 42 28 黒の核晶の存在も悟られず魔法無しでハドラーと戦わなきゃいけないとか3周目くらいでやる縛りプレイだよ…あの場にヒャド系使いがいたらなぁ。 -- (名無しさん) 2021-10-16 17 45 49 バーンの力を使えるミストが現場まで行って直接起動だから無理と思うよ。(魔力は老人体が持ってるんじゃないのかって突っ込みはさておき)>あの場にヒャド -- (名無しさん) 2021-10-16 23 25 28 いいよね。ソーセージのCMでめんこで真剣に遊ぶダイとハドラー。 -- (名無しさん) 2021-10-29 13 27 34 バルトスやザムザの扱いから、自分に尽くす部下に対して本気で信頼したり感謝したりするところもあることが伺える。ミストバーンの死すら一顧だにしなかったバーンとは対照的。 -- (名無しさん) 2021-12-12 23 52 03 メラのところに「これが使えるというだけでポップから驚かれた」ってあるけど、この世界、素養がないと呪文覚えられないから、ギラ系イオ系に加えてメラ系も使えることに驚いたんじゃないの?あとは、普通のメラと違って「死ぬまで消えない」って辺りと合わせて -- (名無しさん) 2022-02-04 13 55 52 前半の中間管理職に落ちぶれてた時代のハドラーは半端じゃない気苦労だっただろうな。ミストバーン→「俺の部下なはずだけど…バーン社長のお気に入りで、実質俺より立場上じゃねぇ?」フレイザード→「禁呪で作った俺の子供みたいなもんだけど、明らかに俺を嘗めてる…隙あらば下剋上もやってきておかしくない」ヒュンケル→「ミストが連れて来た人間の若造だけど、明らかに俺を嘗めてんだよなあこいつ…」ザボエラ→「内心で俺の事を小馬鹿にしてるよね、分が悪くなったら別の奴に派閥代えるぞこいつ…」バラン→「バーン社長が連れて来たけど俺より遥かに強い…しかも俺の事を思いっきり軽んじてる…、つーか部下の一人も(ラーハルト)俺より強くね…?」クロコダイン→「こいつだけは裏表なく働いてくれる…裏切ってダイ側に着きおった!」 -- (名無しさん) 2022-02-24 23 10 58 73話最高過ぎた・・・アニメスタッフの方々には感謝しかない -- (名無しさん) 2022-04-18 09 54 35 あの時、アバン先生が駆けつけるのがタイミング良すぎるだろ、と僅かに思ってたけど、アニオリで挿入されたシーンで納得いった。ゴメちゃんが連れてきてくれたんだよ。ハドラーの「ポップを助けてやってほしい」という願いを叶えてくれたんだよ。きっと…! -- (名無しさん) 2022-04-18 18 38 43 獄炎の魔王で子供を庇って大けがしたアバンに対し「つまらんゴミを守るために早死にするのがお前の未来」と言うのが十数年後の自分の未来だったのがハドラー最大の皮肉にして成長だったな -- (名無しさん) 2022-06-23 16 10 01 ダイ大本編の回想だとクソ野郎なのにスピンオフでかっこよくなるのはズルいのに納得できるのがやっぱりズルい -- (名無しさん) 2022-07-04 23 50 39 最後がアバンの腕の中で…というのが、最高にイカしたシーンだと思う。もし他のキャラの腕の中だったら、ここまで感動的なシーンにはならなかっただろう(他のキャラの魅力がないのではなくて、因縁的に)。 -- (名無しさん) 2022-09-08 10 58 29 獄炎の魔王ハドラーが思った以上に強い -- (名無しさん) 2022-09-22 01 05 18 個人的に面白いと思うのが、バルトスを処刑した後もヒュンケルとのやり取り的に「バルトスとヒュンケルは親子」っていう、魔族と人間の共存関係みたいな点をごく自然に受け入れてる所。 -- (名無しさん) 2022-09-22 02 10 46 2021-10-16 17 45 59 バランならヒャド系を使えていてもおかしくないし(デイン系をメインに使っていた物の、設定上は竜の騎士はあらゆる呪文を扱えることになっている)、ヒャド系で黒の核晶を一時的に止められることを知っていてもおかしくない。しかしバーンが直接魔法力を送って起動させれば意味がないし、それ以前にハドラーの魔炎気でかき消されてしまう(キルバーンの頭部に仕掛けられた黒の核晶と同様)と判断し、使おうとしなかったのかも。 -- (名無しさん) 2022-09-22 02 52 47 アニメ版だとちゃっかりバラン黒の結晶凍らせた上で竜闘気で抑え込んでたな -- (名無しさん) 2022-10-09 18 26 03 懐かしいなあ -- (名無しさん) 2022-10-25 11 42 36 敗れ死んでしまった者は勝者の思い出の中でしか生きられない。というハドラーの戦いの美学は好きだな。敗者は勝者に名前を憶えてもらうのも名誉。 -- (名無しさん) 2022-11-09 00 14 26 よく考えたらヴェルザーが地上侵攻を企てなければ、アバンより先にバランに倒されてただろうし、仮にその戦いでヴェルザーが勝ってたら結局覇権は取れなかっただろうしで、昔から割と全方位詰んでる感あるの酷い -- (名無しさん) 2022-11-12 23 31 03 ヒュンケルにしてみれば、ハドラーは会社潰して、父さんやみんなを路頭に迷わせたくせに「何が魔軍司令だ。自分だけ職にありつきやがって」という気持ちだったのか -- (名無しさん) 2023-03-21 22 21 07 ↑2 バランがハドラーに狙いを定めていたのは獄炎の魔王でハッキリと描かれていたな。 -- (名無しさん) 2023-03-22 13 46 28 記事読むだけでシーンがありありと思い浮かんでしまうし泣いてしまうわこんなん… -- (名無しさん) 2023-06-25 13 34 32 もし、ハドラーがマァムがロカとレイラの娘と知ったらどう思うかな -- (名無しさん) 2023-07-02 19 54 07 カリスマ溢れる魔王だったのがどんどん我々のよく知る魔軍司令殿に近づいて行ってる -- (名無しさん) 2023-09-26 00 49 29 ちゃんと祈りの間で魔界の神を拝んでたり無頼漢のくせに妙なところで信心深い -- (名無しさん) 2023-12-15 14 59 43 こう言っちゃなんだけど獄炎の魔王はハドラーのメンタルがどんどん不安定になっていく過程を描いてるようなもんだからなぁ。レイラですら「前に会った時は残酷だけど威厳みたいなものはあった。少なくともグランナードみたいな下劣な奴じゃなかった」って認めてるし。そう考えると本編で超魔生物になってからの武人としての性格は成長したというよりは原点回帰したって感じなのかもしれない -- (名無しさん) 2024-01-21 13 19 06 配下の引きはダイやバーンにも決して負けないのに本人が崩れると恐ろしいほどに機能不全を起こすのがね。メンタルの上下が魅力だけど最初から本人が安定してたらガチで隙がないな。 -- (名無しさん) 2024-01-21 20 47 38 ↑2言ってしまえばSTAR WARS EP1~3のアナキンが、如何にダースベイダーになったのかってのと構図は一緒 -- (名無しさん) 2024-01-22 18 21 31 まさか令和の時代になってハドラーの若かりし頃が判明するとは! 一時的とは言えども、最終決戦時にはちゃんとメンタルリセット!してたのね -- (名無しさん) 2024-02-21 00 47 33 そういや今更だけど、シレっとハドラーが魔界出身である事が明確化されたんだよね。…こんなギラギラしながら一緒に地上攻め込もうぜって言いまわってるヤツが存在気付かないとかやっぱバーン様雌伏し過ぎなんじゃ -- (名無しさん) 2024-03-24 19 05 04 純血の竜の騎士や大魔王さまとまた違うカッコ良さと魅力があるのよね「超魔ハドラー」(魔軍司令の方は愛嬌がある) -- (名無しさん) 2024-05-06 06 55 14 ハドラー(の部下)とアバンで育てた勇者たちが大魔王倒したんだなあ、これが運命ってやつか? -- (名無しさん) 2024-05-08 18 58 49 魔王時代のハドラーも魔界の同胞たちの為に戦ってたからそこまで悪魔と違うかと。少なくとも地上に住んでる何千万という魔族やモンスターごと地上を吹き飛ばそうとした大魔王様よりわな。 -- (名無しさん) 2024-06-20 16 40 41
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前ページ次ページゼロの剣士 #1 「青年の名はロト。異世界より来たりし冒険者――勇者ロトと名乗っておった」 オスマンの言葉に、ルイズとヒュンケルは顔を見合わせた。 その名はルイズにとってはもちろん、ヒュンケルにも聞き覚えのないものだったのだ。 しかし――勇者ロト。 その名前はなにかとても印象深い響きをもって二人の耳に入ってきた。 勇者という言葉でルイズが連想するのは、タバサがよく抱えている『イーヴァルディの勇者』という本だったが、 ヒュンケルが思い浮かべるそれはかつての勇者である師・アバンと、未熟ながらも世界を救おうと奮闘する弟弟子・ダイの姿だった。 ロトという青年も彼らと同じように、世界のため戦った英雄なのだろうか。 想像を膨らますヒュンケルを余所に、オスマンは懐かしげに思い出語りを始めた。 「あれは何十年前のことだったかのう。たぶん百年はいってないと思うが、まあそんくらい前のことじゃ。 ある日森に出かけたわしは、そこでとても大きなワイバーンに襲われたのじゃ。 不意を食らったわしは杖を失ってしもうてな、そこで命を落とすことを半ば覚悟した」 そこまで言って、オスマンは過去の情景を瞼の裏に思い浮かべるように目をつむった。 話の流れから考えるに、おそらくそこで勇者ロトが現れたのだろう。 物語の中の王子様みたいね、とルイズは思った。 もっともロトは、助ける相手を大いに間違えたようだが――。 「突然のことじゃった。ワイバーンが牙を剥き、今にもわしに襲いかかろうという時、剣を持った青年が颯爽と現れた。 青年は剣でワイバーンの巨大な鉤爪を受け止めると、天に指をかざし、魔法を唱えた。 ……なんという名前じゃったかな。ザムディン……いや、違うのう」 オスマンはまるで便秘中のようにウンウン唸った。 ルイズはいいところで話を切られてもどかしかったが、そこでヒュンケルが口を挟んだ。 「もしや……ライデインでは?」 ライデイン――それはヒュンケルの世界で、勇者のみが使える神聖な雷の呪文である。 まさかと思いつつ聞くと、オスマンはそうじゃそうじゃと陽気に頷いて話を続けた。 「青年がライデインと唱えると、天から物凄い雷が降り注ぎ、ワイバーンは一瞬で巨大な焼き鳥になってしもうた。 わしも随分と色々な魔法を見てきたが、あれほどのものは滅多にお目にかかったことがない。 そしてなによりわしを驚かせたのは――その青年が杖を持っていなかったことじゃ」 「ということは……彼はエルフだったんですか?」 エルフは杖なしで魔法を使える異端の種族。 人間とは敵対している者達でもある。 ルイズはオスマンの話を聞いて真っ先に彼らを思い浮かべたが、オスマンは言下にその推測を否定した。 「いや、彼は少なくとも外見上は、我々とまったく同じ人間じゃったよ。 わしも最初はまさかと思ったが、彼自身も自分は普通の人間だと言っておった。 ただ、『普通の』の前に『異世界から来た』が付け加えてあったがの」 そう言ってオスマンは思い出し笑いをした。 ルイズはどこからツッコミを入れればいいのかも分からず、とりあえず続きを促した。 オスマンは笑いを収めて真面目な顔を作ると、また語り始めた。 「杖なしで使われる見たことのない魔法。身一つでワイバーンの巨躯に耐える身体能力。 珍奇なアイテムの数々と、彼自身が纏う独特の雰囲気。 彼――ロトが異界の勇者と名乗った時、わしは疑うよりもむしろ奇妙に納得した。それほど彼は異質な存在だったのじゃ。 ――そう、ヒュンケル君、きみのようにな」 オスマンはそこでちらりとヒュンケルを見た。 ヒュンケルは何も言わず、無言で続きを促したが、そこで横からルイズがおずおずと、オスマンに疑問を唱えた。 「オールド・オスマン、ヒュンケルがその……異世界から来たっていつ気づかれたんですか?」 ずっと一緒にいたわたしでも気づかなかったのに、と半ば不満そうに言うルイズに、オスマンは優しく微笑んだ。 「気づく気づかないというより、これは発想の問題じゃな。 ロトとの出会いがなければ、わしも異世界などという突飛なことは思いつかんかったじゃろう。 実際、最初ヒュンケル君がミスタ・グラモンを倒した時は、わしもそのルーンの力のおかげだと思っておった。 しかしどうにも気になって彼を観察しているうちに、だんだんそれだけでは説明がつかぬように思えてきたのじゃ」 ルーンの力と聞いてルイズは不意に、フーケがヒュンケルを『ガンダ―ルヴ』と呼んだことを思い出した。 ガンダ―ルヴと言えば始祖プリミルを守り抜いたとされる伝説の使い魔だ。 一説によればかの使い魔は右手に長槍、左手に大剣を持ち、あらゆる武器を操ったという。 信じがたい話だが、もしもヒュンケルがそれなら、ギ―シュを倒せたことくらい当然のことではないか? 異世界やら伝説やら、なんだか頭がクラクラしつつも尋ねるルイズに、オスマンは大真面目な顔で頷いた。 「たしかにヒュンケル君は、かの使い魔の再来なのかもしれん。 実はヒュンケル君のルーンの形は、ガンダ―ルヴのそれと酷似しているのじゃ。 一騎当千と謳われたガンダ―ルヴなら、たしかに並みのメイジじゃ相手にならんじゃろう。 ――しかしところでミス・ヴァリエール、きみは突然自分がエルフの魔法を使えるようになったらどう思う?」 「どう思うって言われても……ありえません、そんなこと」 唐突な質問に面食らって応えると、オスマンはまさしくそれが正解だというように頷いた。 「そうじゃ。これまでなかった強大な力が突然手に入ったとあれば、戸惑うのが自然なことじゃ。 しかし、彼はまるでその力が元からあったかの如く受け入れておった。 ドットとはいえメイジを一人倒しておいて、なんの感慨も抱いていないようじゃった。 その抜き身の剣や常識の欠如なんかも疑う要因にはなったが、一番の理由はそこじゃな。 わしは、ヒュンケル君が元からメイジを凌駕する実力を備えていたのではないかと思ったのじゃ。 そしてフーケの巨大なゴーレムを倒したのを見た時、疑いは確信になった」 「――それでは、その使い魔を寄越したのはフーケを探すためでなく、俺の観察を?」 ひさしぶりに口を開いたヒュンケルの視線の先には、オスマンの肩口に居座るハツカネズミがいた。 モ―トソグニルは愛嬌のある目をヒュンケルに向けて、さえずるような鳴き声をあげた。 「まあ、きみに言ったことも嘘ではない。理由としては半々じゃな。 ロトは彼の世界ではメイジ――『魔法使い』と肩を並べて戦う、『戦士』という職業があると教えてくれた。 前衛として武器一つで魔法と同じか、それ以上に強力な攻撃を繰り出す、頼もしい仲間としてな。 わしは最初、きみがそれなんじゃないかと思ったが――フーケに使ったのは魔法ではないのかね?」 オスマンが聞いたのは、フーケに使った闘魔傀儡掌のことであった。 ハルケギニアにはない概念なので少してこずったが、ヒュンケルは攻撃的生命エネルギー、闘気のことを説明し、あれは魔法ではないと教えた。 オスマンは身を乗り出すようにしてふむふむと頷くと、嘆息して言った。 「なにかというと魔法と思いたがるのはメイジの悪い癖だと思っておったが、まさかそんな力があったとはのう。 ロトも君に劣らぬ剣の使い手だったが、彼もまたその闘気を使っておったのかな?」 オスマンが聞いたが、ロトと会ったことのないヒュンケルに分かるはずもない。 ただヒュンケルは、闘気は多かれ少なかれ誰の中にでもあるとだけ答え、ロトの話の続きをするよう頼んだ。 オスマンはルイズの顔を見て、彼女が頷くのを確かめると中断していた昔話を続けた。 「たしか、ロトがワイバーンを倒したところまで話したんじゃな? ――うむ、なにはともあれ命を救われたわしは、しばらくロトの生活の世話をすることにした。 わし自身が彼に興味を覚えたからでもあるが、彼の方もまだこの世界に不慣れな様子だったんじゃ。 彼の滞在中、わしはこの世界の魔法や地理の知識をロトに教え、ロトの方も彼の世界のことをわしに聞かせた。 ロトは好んで自慢話をする人間ではなかったが、彼が物語る話の端々から、彼が並々ならぬ英雄であることが窺えた。 わしとロトは年の離れた友人としてよく親しみ合った。背景は違えど、わしらには共通の趣味があった――そう、読書じゃ」 そう言ってオスマンは感慨深げに『悟りの書』改め『神竜のエロ本』を見つめた。 本の内容さえ知らなければ哀愁溢れる姿に見えなくもなかったが、ルイズは内心ドン引きした。 オスマンは思い出の詰まったエロ本から目を上げると、話を続けた。 「わしらは互いに秘蔵の本を照覧し合った。 この道を究めたと思っていたわしじゃが、わしの蔵書で彼に勝るのは量だけであり、質では完全に負けておった。 打ちひしがれるわしを見かねてか、彼はこの『神竜のエロ本』をわしに差し出した。 わしはもちろんこれほどの名著はもらえぬと言ったが、彼はもう暗記しているからと言って……」 『神竜のエロ本』贈与の感動秘話はそれから五分ばかり続いたが、 二人がまったく呆れた顔をしているのを見て、オスマンは渋々その話を切り上げた。 ヒュンケルは再びロトのその後についての話を促した。 しかし、オスマンの返答は芳しいものではなかった。 「うむ、『神竜のエロ本』をわしに渡してしばらく経った後、ロトはまた冒険の旅に出て行った。 一度だけわしのところに戻ってきて、色々な国を見て回ったと報告してきたが――それっきりじゃ。 ロトはもうここには来なかった。もしかしたら元の世界に帰ってしまったのかもしれん」 そう言ったオスマンの顔は、思いのほか寂しさの滲んだものだった。 誰よりも長く生きてきたオスマンは、誰よりも別れを繰り返してきたのだと不意にルイズは思った。 もしもヒュンケルがいなくなったら――自分はどうなるだろうか。 「ロトはどうやってこの世界に来たのだろうか……。 彼は一人だったのですか?」 嫌な想像図に顔をしかめるルイズの横で、ヒュンケルはある意味ピンポイントな質問をオスマンにぶつけた。 もしロトが世界を行き来した方法が分かったなら、自分も元の世界に帰れるかもしれない。 一見普段と変わらぬヒュンケルの表情に、そんな期待が滲んでいるのをルイズは見てとった。 しかしルイズにとって幸か不幸か、オスマンは記憶を辿るように唸るとこう答えた。 「ロトはきみのように召喚されたわけではなく、自分の意思でこの世界に来たようじゃったが……方法は分からぬな。 なにかアイテムを見せてくれたような気もするんじゃが、なにしろ『神竜のエロ本』のインパクトが強すぎてのう」 のほほんと応えるオスマンを見て、ヒュンケルはため息をついた。 もしかしたらそのアイテムをオスマンが持っているのではないかと思ったが、もらったのは『神竜のエロ本』だけだという。 落胆するヒュンケルに、オスマンは自分の方でも元の世界に帰れる方法を探しておくと約束をした。 オスマンの言葉はとても頼りがいのあるものではあったが、その後に続けた言葉がまたどうにもオスマンらしかった。 「それで代わりと言ってはなんじゃがな、ヒュンケル君。この『神竜のエロ本』の小説を翻訳してくれんかの? いや、ロトは途中までは読んでくれたんじゃが、読み終える前に出てってしまって……」 ヒュンケルとルイズは顔を見合わせると、深く、とても長いため息を同時に吐きだした・ モ―トソグニルが餌をせがむように、ちゅうちゅう鳴いた。 #2 フリッグの舞踏会。 学院長室を出たルイズは、大急ぎでおめかしを済ませパーティーに出ていた。 桃色の髪をバレットでまとめ、ホワイトのドレスを着こんだその姿は、 日頃ルイズを馬鹿にしている男子達をもってしても文句のつけようもない美しさをたたえていた。 魔法が使えないことや口が悪いことや胸がないことを差し引いても、今のルイズはとても魅力ある少女である。 当然、ダンスの誘いをひっきりなしに受けたが、ルイズは気のない返事をしてぼんやりワインを飲んでいた。 実際には単に今日起こった様々なことに混乱してわけがわからなくなっているだけなのだが、 ドレスアップした今のルイズが大人しくしている姿はまたとても清楚に見えて、男子達は心中で身を悶えさせた。 と、そこへ大量の男を引き連れたキュルケが通りがかった。 「あらルイズ、馬子にも衣装ね」 「なによキュルケ、なにか用?」 つれない様子のルイズに、キュルケは少しつまらなそうな顔をした。 「別にあなたに用はないわよ。ヒュンケルはどこ? 一曲お相手願いたいんだけれど」 「あんたは後ろの金魚のフンと踊ってりゃいいじゃないの」 言いつつルイズはさっきまでヒュンケルがいたところを見たが、そこに彼はいなかった。 食事でもしているのかと思ってテーブルの方を見たが、タバサが大きな肉を食べているのが目に入るばかりだ。 ならばまたオスマンと一緒かと思ったが、オスマンの隣りには袖口から包帯を覗かせたギ―シュがいるだけだった。 ちなみに何故かギ―シュは顔を真っ赤にさせて鼻を押さえている。 「先に帰っちゃったのかしら?」 残念そうに言うキュルケの言葉を聞いて、ルイズはなんとなく不安になってきた。 そんなはずはないと思いつつ、ヒュンケルがもういなくなってしまったような気がした。 「ちょっと、ルイズ! どこ行くの!?」 呼び止めるキュルケの声を無視し、ルイズは長いドレスの裾を持ち上げてホールから出て行った。 #3 二つの月が、煌々と輝いている。 本塔の方からはパーティーを彩るワルツの調べが微かに漏れ聞こえてきた。 ここはヴェストリの広場。 人気のないこの場所で、ヒュンケルは一人たたずんでいた。 「なにもよう相棒、こんなとこで一人酒食らう必要はねえじゃねえか。会場に戻ろうぜ、な?」 「なんだデルフ、パーティーに参加できなくて寂しいのか?」 「そんなことないけどよ、なんつうかこう……相棒も結構な変わりもんだな」 子供をなだめすかすようなデルフの声を聞いて、ヒュンケルは口の端で少し笑った。 華やかな雰囲気に馴染めず出てきてしまったが、少し子供じみていたかもしれないと思い返す。 「そういえば、ルイズに何も言わずに出てきてしまったな。怒っているだろうか?」 ヒュンケルが聞くと、デルフはくすくす笑って言った。 「なんだ相棒、あんなゴーレムを倒せるのにあの嬢ちゃんが怖いのか?」 「いや、そうではないが――ドレスを褒めるくらいしてもよかったかもな」 「だったら言ってやんなよ、ほれ」 デルフの言葉に顔を上げると、暗がりの中を白い影が猛スピードでやってくるのが目に入った。 ドレスを着こんでいるとは思えない速さで、ルイズが息切らせて走ってきたのだ。 ルイズはヒュンケルの前まで来ると二の腕を掴み、荒い息を整えた。 どうかしたのかと聞きかけたが、ヒュンケルは賢くもそれが地雷になりうると気づいて口を閉じた。 しかし哀しいかな、ヒュンケルはとっくのとうにルイズの地雷を踏んでいたのだった。 「バカ! カバ! なんでご主人様をほっぽって出て行っちゃうのよ! あんたがいないと、その、あの……とにかく困るのよ!」 若干、後半が尻すぼみになっていたが、ルイズはどうにも尋常じゃなく拗ねていた。 怒りのためか、涙で潤んでいるのか、ルイズの目はぎらぎら光ってヒュンケルを見つめていた。 ヒュンケルが謝り、デルフが取りなし、ルイズが気を落ちつかせた時には、 舞踏会から漏れ聞こえる音楽はワルツからバラード調のものに変わっていた。 ルイズはドレスを着ているのも意に介さず芝生に座ると、ヒュンケルに問いかけた。 「ねえヒュンケル、あんたの世界ってどんなとこ?」 「――まず思いつくのは、月が一つしかないことだな」 「それ本当? ヘンな世界ね」 ルイズは言って笑うと、空に浮かぶ双月を見た。 月が一つしかない世界があるなんて、今まで考えたこともなかった。 しかしそれを言うならば、今隣りにいるヒュンケルだって、考えたこともない存在なのである。 月の他には何かないの、と聞くと、ヒュンケルは少し視線をさまよわせ、力なく首を振った。 「分からないな。俺はあの世界を当たり前のように思って生きてきた。 いや、それどころか憎んでさえ生きてきた。 だからルイズに聞かせて楽しませるような事柄が浮かばないのだ」 「憎んで……ってどういうこと?」 気になってルイズが聞いたが、ヒュンケルは何も言わなかった。 ただその目が、見捨てられた野良犬のようなものに見えて、ルイズはそれが何故かとても気に入らなかった。 なによ、あんたはわたしの使い魔なんだからそんな目をしないでよ、とルイズは内心思った。 そこでルイズは、自分の使い魔にちゃんと首輪を付けてあげることにした。 「そういえば今日、わたしをその、助けてくれたわよね。だから、ご主人様として御褒美をあげるわ」 言ってルイズはパーティー用の小さなバッグをごそごそすると、そこから一つのペンダントを取りだした。 それは鎖に涙形の石をつけた質素なものだったが、ヒュンケルはそれを見て大きく目を見開いた。 思えば今日は、ヒュンケルの色々な表情を見れたわね、とルイズはふと思った。 「ルイズ、どこでそれを?」 「あんたが召喚された日に、近くの地面に落ちてたのよ。ずっと忘れてたんだけど、さっき衣装箱を開けた時に見つけたの」 差し出されたそれを、ヒュンケルは宝物に触れるような手つきで受け取った。 いや、それは間違いなくヒュンケルにとって一番の宝物だったのだ。 喜色を浮かべるヒュンケルを見て、ルイズはなんだ、元の世界にも大事なものがあったんじゃないのと拍子抜けした。 それはルイズにとって何故だか少し寂しいことでもあったが、なにもないよりは百倍もマシなのもまた確かだった。 「ねえヒュンケル、そのペンダントに何か思い出でもあるの?」 もしかしたら女から貰ったものだろうかとちょっとドギマギしながらルイズは聞いてみた。 しかし幸運なことに、ヒュンケルの答えはまったく違うものだった。 「これはアバンのしるし。俺の先生がくれた、卒業の証だ。 死んでも手放したくないと思っていたが……ありがとう、ルイズ」 正面きって礼を言われ、顔を赤らめたルイズは、それをごまかすように立ちあがった。 舞踏会から聞こえる音楽は、もう終わりにさしかかっている。 今から戻っても間に合わないわね、うん、絶対確実に間違いなく、とルイズは思った。 だからしょうがないから、純論理的に考えて、目の前にいる使い魔で間に合わせるしかないのである。 まったくもって残念ではありますが――。 「ヒュ、ヒュンケル。わたし、あんたのせいで一曲も踊ってないの。だから、責任持って、踊りなさいよ?」 一言一言区切るように言いながら、ルイズはヒュンケルの腕をとって立ち上がらせた。 かのストイックな使い魔は自分は踊れないだのなんだの言ったが、意にも介さない。 少しぎこちないステップを踏むヒュンケルに体を預けて、ルイズが消え入るような声で囁いた。 今日は助けてくれてありがとう、と小さく可愛い声で。 「こりゃおでれーた!主人のダンスの相手をする使い魔なんて初めて見たぜ!」 そう言ったデルフは鎧の魔剣を見て、俺達にも手足があったらなあと嘆いてみせた。 二つの月と二振りの魔剣が見つめる中で、ルイズとヒュンケルはいつまでも踊り続けた。 前ページ次ページゼロの剣士
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ダイの剣を装備した最終ハドラー戦前のダイ アバンストラッシュXやギガストラッシュを使える
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――第4話―― 前ページ次ページ虚無と爆炎の使い魔 ――プロローグ―― とある広い屋敷の中にある広場にて一人の少女が魔法を唱えた。 ――結果は爆発。それを横目で見ていた使用人達は互いにひそひそと囁き会う。 「母親のカリン様も、長姉エレオノール様、次姉カトレア様も優秀なメイジなのにねぇ?」 「魔法が全て失敗する貴族なんて聞いた事もないね。……本当に貴族なのかしら?」 「もしかして拾わ…むぐ」 「滅多な事を言うな!誰かに聞かれでもしたら打ち首もんだぞ」 そんな使用人達の言葉を少女は気にも留めず、淡々と魔法を唱え続けた。だがその努力が報われる事は無く、地面のあちこちに穴を作っていくだけである。 それでも彼女はいつもの広場で魔法を唱え続けた。雨の日も、風の日も。 魔法が使えない事で母や長姉に叱責を受け、悲しみの涙を流した日もそれが止む事は無かった。どこかで泣き腫らしたのであろう、赤い目をしながらも少女は、それでもいつの間にか広場で来ては、いつもの様に魔法を唱え始めるのだ。 最初は影で笑っていた使用人達は、次第に何も言わなくなっていった。その心の内は、少女のひたむきさを哀れむ者。心の中でひっそりと応援の声を上げる者。反応は様々である。 ある日、彼女の行動にどうしても疑問を覚えた使用人の一人が彼女に質問をした。「何故そこまでするのか」と。 少女は答えた。「魔法が使えない者など貴族では無いわ。いざという時に民を守る力が無いのならそれは貴族では無い」 だがその言葉を聞かされても、この物好きな使用人の心は晴れなかった。少女に追って質問する。 「ですが、それは戦があった時のみでございます。一生を平和に暮らした貴族の方々も少なくはありません。それに……」 少しだけ言葉を発する事をためらった後、使用人が続けた。 「魔法の才無くも、自らの政治的手腕や商才を磨き、名誉ある位まで上り詰めた貴族の方も沢山いらっしゃいます。それに貴方はヴァリエール家の三女。戦に出る様な事などほぼ無いと思うのです。貴方がそこまでして魔法にこだわる理由とは一体何なのですか?」 黙ってしまった少女を見て使用人は、出過ぎた事を言ってしまったかな?と思った。誰かに知られれば処罰も免れないだろう。 だがそれについては使用人はあまり気にしていなかった。どうせいつかは家業を継がなければならない身である。少しぐらい早まった所で同じであろうと考え、少女の返答を待った。 物好きだな、とは思う。この少女がやっている事は単に貴族の気まぐれなのかも知れない。だが―― 自分はこの報われぬ少女を哀れんでいるのだろうか?たかが使用人風情が、大貴族の娘に自分と同じく他の『道』もあるという事を説きたいのだろうか?そんな思いが胸の内に湧き起こる。 考え込んでいた少女がようやく声を上げた。はっきりと通る、意思の篭った声だった。 「――――」 少女の意識はそこで途切れた。 ――第4話―― 「……何でだっけ?」 ついぞ見た夢の内容にルイズは疑問符を浮かべる。だがその問いに答える者は誰もいなかった。仕方なく自分で答えを導き出そうと、まずは襲い来る眠気に抗おうとする。が、 「まぁいいか」 ルイズは早々に諦めた。夢は確か数年前の内容だ。直前のやり取りから察するに何か青臭い発言でもしたに違いない。そう思い直して再び目を閉じようとする。 「……?」 上瞼が着地するぎりぎり前にルイズは、部屋に射し込む陽光がやたら明るい事に気付いた。そこから導き出される結論をしばし黙考した彼女が慌てて跳ね起きる。 「――ってこのまま寝たら遅刻じゃないのよ!」 そう叫び、威勢良く立ち上がった。が、その瞬間全身に違和感を感じる。身体の節々がやたら熱く、筋肉がパンパンに張っている。 跳ね起きた姿勢のままルイズは凍りついた。全身を脂汗が浮き出し、そして―― 「痛だだだだああああ~~!!」 昨日ルイズが召喚した使い魔との激戦は、彼女の身体を限界以上に酷使していた。 いかな優秀な水メイジであろうと後から来る痛みは直せない。全身を襲う強烈な筋肉痛にルイズがベッド中をのたうち回った。 ――シーツが皺まみれの無残な姿に変えられた頃、ようやくの思いでルイズは起き上がった。芋虫の様な動きでよろよろと着替えを完了させる。 おぼつかない足取りで部屋を出たルイズは、廊下を挟んだ向かい側の部屋の主とばったり対面した。 「お、おはよう。ルイズ」 対面の主がにこやかに微笑む。が、いつもと違いその顔はぎこちなさに満ち溢れていた。 笑うだけで精一杯といったその笑みを見て、今の自分と同じ状態なのが一目で判ったルイズは挨拶を返す。 「おはよう。キュルケ。……その分じゃあんたもそうみたいね?」 「当たり前じゃない。……っていうかあんな戦いの後に何も無い方が不思議よ。コルベール先生も未だ回復してないって聞くし」 キュルケの言葉にコルベールの名前が出た瞬間、ルイズは沈んだ表情になった。自分をかばおうとしてくれた教師の姿が胸に浮かび、申し訳無いという気持ちが湧き上がってくる。 そんなルイズの顔にキュルケは慌てて取り繕おうとした。 「だ、大丈夫よ。どうやら精神的なものらしくて命には全然別状無いって聞いたから。貴方が無事契約できて先生もきっと喜んでる筈よ」 そこで一旦切ると笑顔を作り、ルイズの顔を覗き込んでウインクをした。 それを見てようやく顔を上げたルイズに満足すると、諭すような口調で続ける。 「……だ・か・ら!先生の為にもそんな顔しない方がいいわよ。……ついでに後でもう一度くらいお見舞いに行ってあげなさいな」 キュルケの口調はまるで子供に言い聞かせる母の様であった。いつものルイズなら「人を子供扱いするな」と、まずは反発して来るに違いない。そんないつもの『お約束』をどこか期待しつつキュルケが反応を待つ。 「……そうね。そうするわ。……あ、ありがとう、……キュルケ」 だが今日は違った。昨日までは考えられない事であったがルイズは素直にキュルケに感謝の言葉を述べたのである。 顔を赤くしながら礼を述べたルイズを見て逆にキュルケが慌て出した。ルイズに向けて手を伸ばすと、赤くした顔で「い、いいいいいのよ別に」とそっぽを向く。 「か、かわいい……」 しおらしい反応を見せたルイズへの素直な感想を独り洩らすキュルケだった。 ――あのルイズが私に感謝の言葉を述べるなんてね―― ようやく落ち着いて一息漏らすと、ルイズとの今までの関係を思い出したキュルケがしみじみとする。 入学してからこっち、事ある毎に二人は衝突した。性格が水と油な上、家が仇敵同士だった事もあり、お互い最初の頃は本気で嫌っていた。 ――……いつからかしらね?―― 先に態度を変えたのはキュルケだった。性格が合わないながらも、誇り高く、常に努力し続けるルイズの姿にいつしか胸中で応援する様になっていた。 とは言えそれでこれまでの関係が急変した訳ではない。ルイズへの見方が変わっても、あくまで表面上はルイズをからかっている様な言い回しをする。 だがその内容はこれまでと違ってルイズを励ましたりハッパを掛ける、といったものになっていた。 当然の事ながらルイズはそんなキュルケの言外の気持ちには全く気付かず、その後も(表面的に)対立を繰り返す事になる。 こういった回りくどい方法をとったのは本人曰く「ルイズの反応が面白いから」 だが本当の所は『急に素直に接するのが照れくさい』というのが最大の理由であった。 と言う事で、そんな傍から見れば下らない理由で、毎日の様に喧嘩をする二人を眺めていたタバサはやがて『二人は似たもの同士』という結論を出すに至ったのである。 しかしそんな関係も昨日を境に変化が生じた様だった。 ――まあ当然か。あの使い魔にとっては貴族だろうが平民だろうが等しく関係無いんでしょうし……。あんな状況で『家が仇敵』だから協力しないなんて言ってられないものね―― キュルケはそう結論づける事にした。それほど、昨日の体験は強烈なものだったのである。 ルイズがハドラーを召喚してから戦いが終わるまでの間、あの場にいた者が受けたプレッシャーは並大抵のものでは無かった。それは生物としての根源から来る恐怖感である。 『魔法の有無など関係無い。あの男が本気になれば我々人間など皆平等に無にされるのだろう』 全員が等しくそういった思いを味わった。 そんな中をルイズ達は戦った。貴族はおろか、始祖の時代から6000年もの間『この大陸を支配している』という人間としての価値観を根こそぎ剥ぎ取られそうな空間にて共に協力し合い、試練に打ち勝とうとした。 一つの目的に立ち向かおうとした三人にとって、下らないわだかまりなどいつの間にか無くなっていた。そしてついには契約を成功させる。 自覚こそ無いものの、あの一日を生き抜いた三人の関係は、今や幾多の戦場をくぐり抜けた戦友のそれへと変化していた。 表向きこそ変わらないものの、以前と違ってルイズの方からも心の深い所では二人を信頼する様になっていたのである。 「それにしても……」 ふっ、と目を柔らげたキュルケが独り呟く。 「……ずいぶん可愛くなっちゃったわよねぇ」 「……何の話よ?」 キュルケの呟きは聞こえていたらしい。ルイズがしかめっ面で問い正した。 「貴方もちょっとは魅力的になってきたって事よ。ルイズ」 「いきなり何言い出すのよ……気持ち悪いわね」 「……まあこっちの魅力は相変わらず絶望的な様だけど」 「喧嘩売ってるのかしら?キュルケ」 急に自分を褒め出したかと思うと、今度は胸を覗き込むキュルケにルイズは目元をひくつかせる。 「ふふっ、冗談よ。それじゃ先に行くわね」 当の本人はどこ吹く風だった。 にこりと微笑んだキュルケはそう言って素早く切り上げると、ルイズに背を向けた。使い魔のサラマンダーを従え、食堂の方向へと向かって行く。 筋肉痛にはもう慣れたのか、それともやせ我慢なのか。その足取りは、普段通りのキュルケだった。 そんなキュルケの一方的なやり取りに、ルイズはすっかり言い返す時期を逸してしまった。キュルケの背中を見つめ、喉まで出かかった言葉が虚しく沈んでいく。 「貴方も早く『彼』を連れて来ないと遅刻するわよ~」 10メイル程先に進んだキュルケが振り返らないまま、ルイズに忠告した。 「わかってるわよ!馬鹿!」 やり込められたルイズが半ばやけくそ気味に叫ぶ。その声を聞いたキュルケは愉快そうに後ろ手を振ると、そのまま階段を降りて行った。 キュルケが去った後も、若干頭に血が上っていたルイズはその場に佇んでいた。心を落ち着かせる様、自分に言い聞かせてようやく再起動する。 「いけない!本当に遅れちゃう」 ルイズは焦るものの、いつまで経っても肝心の使い魔は起きて来なかった。収まった筈の血圧が再び上昇していく。 「……もうっ、ハドラーの奴……。ご主人様より起きるのが遅いなんて、使い魔失格よ!」 そうは言ってみたルイズだが、同時に仕方無いかな、とも思う。 あの使い魔の力に比べれば、自分など蟻の様なものだ。契約はできたものの、やはり今のままでは本当の主従関係には程遠い。そう考えて、ついため息を零す。だがその表情は沈んではいなかった。 「まあ、今の私じゃ仕方無いか……。でも、まだこれからよ。見てなさい!いつか成長した私を見て「お前に従おう」って言わせてやるんだから!」 拳を握ってそう宣言し、気を取り直したルイズが自分の隣の部屋の入り口に立つと、そのまま扉を軽くノックした。 この扉の向こうがハドラーの部屋だった。当然これには理由がある。 ルイズは当初、『使い魔と主人は一心同体』の教えを律儀に守り、自分の部屋にハドラーを住まわすつもりだった。 だが、ルイズに案内されて寮内を歩くハドラーを見た同じ階の生徒達が、詳しく言えば、昨日のハドラーによる大惨事を直に『体験』した者達が、皆一斉に「部屋を変えてくれ」と直訴したのだ。 その為にルイズの周辺の部屋はキュルケを除き、軒並み空室となった。そのおかげで手近な部屋をハドラーに貸し与える運びとなったのである。 ちなみに、それでも最初、ルイズは自分の部屋に住まわせようとしたのだが、ハドラーの身体がかなり大きい事、二人っきりで一つの空間にいると心理的なプレッシャーが半端無い事からすぐに断念した。 ノックにも返事が無かったので、ルイズが試しとばかり扉を軽く押してみた。ギイ、と扉が開く。鍵は掛けていなかったらしい。 「ハドラー……。入るわよ?」 一つ断るとルイズが部屋に入った。 部屋の中は全体的に薄暗かった。たが締め切ったカーテンからは幾筋かの陽光が床を照らしており、見えない訳では無い。 中に入ったルイズは部屋の様子が昨日と違う事に気付いた。 ――部屋の中はからっぽだった。普段なら入ってすぐ目に入る筈のベッドやテーブル、クローゼット等が軒並み姿を消しており、床と壁、天井だけのがらんとした空洞が広がっていた。その中でルイズは、部屋の奥の中央に見慣れない物を見掛ける。 椅子だった。元あった簡素な物では無く、王族や一流の貴族が使う様な、ソファに近い立派な造りの物である。 その椅子にルイズの探していた使い魔――ハドラー――の姿が納まっていた。ひじ掛けに腕を着け、軽く俯いて目を閉じている。陽光差し込む部屋で静かに君臨するその姿は正に一枚絵の様だった。 あまりに堂に入った光景につい見とれてしまっていたルイズだが、やがてかぶりを振ると、ドラーを起こした。 「ハドラー……起きなさい。ハドラー!」 「……む……」 ルイズの声にハドラーが目を開いた。意識が覚醒し、その瞼が上がっていくにつれ、歴戦の戦士たる鋭い目つきへと変わっていく。 「何か用か?主よ」 ルイズの姿を視界に入れたハドラーは静かに言った。落ち着いた様子からして、どうやら寝起きは良いらしい。さっきの眼光に少しだけたじろいでいたルイズは内心安堵した。 「ええ。悪いけどすぐ仕度して。朝食に間に合わないわ」 「朝食……?俺も着いて行くと言うのか?」 値踏みするかの様にハドラーがじろりと見た。ルイズも負けじと精一杯虚勢を張って対抗する。 「そ、そうよ。貴方の食事も既に用意してあるわ。もしいらなかったのだとしても前もって言ってくれなかった以上は、着いて来るのが当然でしょ?」 有無を言わせぬ強い口調であったのだが、いかんせんハドラーを見上げて必死に訴えるルイズの状況は、主というより元気のいい部下といった感じだ。それでも主たらんとするルイズの言葉にハドラーはつい苦笑する。 「そういう事か……。なら、ここは主の顔を立てておかねばなるまい」 やれやれといった感じでハドラーが腰を上げた。対するルイズは些細なやり取りの筈なのにどっと気疲れた様子である。 「……ねぇ。そういえばここに元あった家具はどうしたの?」 ふと、ルイズがこの部屋に入って以来、ずっと思ってた疑問を口にした。 「ああ、邪魔だったのでな。処分した」 それが何か?とでも言いた気なハドラーにルイズは戦慄した。 この学院の家具や調度品は、盗難や生徒達が勝手に部屋をいじくらない様、土のメイジ達によってがっしりと床や壁に溶接されている。 しかもその上に破損や劣化防止の為に強力な『固定化』の魔法も掛かっていた。並みのメイジでは動かす事はおろか、かすり傷一つ着ける事すら不可能である。 それが、何をどうすればあの大きさの家具が跡形も無く消えるというのだ?ルイズの精神的疲労が一段と増した。 「そ、そう……。じゃ、じゃあその椅子は?」 止せばいいのにと思いつつ、ルイズは再度聞いた。半ば恐いもの見たさの心境である。 「俺の寝床が必要だったからな。昨夜色々と探していたのだがこれが一番良さそうだった」 それを聞いたルイズがハッ、とした。この椅子に見覚えがあったからである。 確か学院の応接室に置いてあった、高級貴族や王家の者を招待した時に使う特別な物だった筈だ。ついでに言えばあの部屋は普段は魔法で厳重に鎖錠されている。だが、それがここにあるとという事は……。 自分の知らぬ所で使い魔がとんでもない行動をしていた事に気が付いたルイズはついにキレた。 「何で無断でそんな事すんのよ!もし見つかったら罰則どころじゃ済まないわよ!」 つい怒鳴ったが、人間のルールなんてこの男にとっては関係無いだろう。実質処分を受けるのは監督不行き届けの自分だけである。 そんなことを思ってルイズがぜいぜいと息をついた。朝から身も心も疲労しっ放しである。 だがまだ肝心の動機を聞いていない。ルイズの尋問?はまだ続いた。 「……大体、寝床なら備え付けのベッドがあったでしょ?何でわざわざ椅子を持って来る必要があるわけ?」 「単純な事だがな……」 ルイズの怒声にもしごく冷静だったハドラーが初めて声を上げた。凛とした、力ある一声である。 突然空気を変えられてしまったルイズは、それまでの怒りもどこかに吹き飛ばされてしまった様だった。もしかしたらとんでもない理由があるのかも知れない。ごくりと喉を鳴らしてハドラーの言葉を待ち受ける。 「戦いに生きる者にとって柔らかなベッドなどかえって寝心地が悪い。他にも理由はあるが……大方はそんな所だな。それに、だ」 もったいぶった様にハドラーが切った。 「それに……?」 つられてついルイズが聞き返す。たっぷりの沈黙を込めた後、笑みを浮かべたハドラーが、冗談とも本気ともつかぬ口調で言い切った。 「――魔王は『椅子』(玉座)で寝る」 朝食はつつが無く終わった。いつもはルイズが食堂に着くと、皮肉や嘲笑の二つ三つは飛んでくるのだが、今日は違っていた ハドラーがルイズと一緒に食堂に入った瞬間に周りのお喋りがピタリと止み、ルイズ達が席に着けば10メイル四方が綺麗に無人になる。 上級生までもがそれに従っている事から、どうやら昨日の一件は学院中に広まっている様子であった。 当然ルイズへの悪口等飛んで来よう筈もない。皆視線を合わさない様に下を向き、まるで明日死刑になるのを待つ囚人の様に『つつが無く』朝食を終えたのだった。 ――これから無理言ってでも毎日来てもらおうかしら?―― クラスメート達からのちょっかいを受ける事も無く、久々に落ち着いた気分で食事が出来たルイズはそんな事を考えていた。 にこやかな顔をしながら教室へと向かうルイズだったがその最中、突然ハドラーがルイズを引き止めた。 「ここで一旦別れる事としよう」 「……え?」 ハドラーの言葉を一瞬理解できなかったルイズだったが、すぐに反対した。 「だ、駄目よ。主人が教室にいる間は使い魔も傍に控えているのが普通なのよ!?」 ましてや今日は使い魔を呼び出した次の日である。皆喜々として教室に使い魔を連れて来る事は容易に想像出来た。ルイズは焦った様にハドラーの意見を却下する。 だがそんなルイズに黙ってかぶりを振ると、ハドラーは事実を突き付けた。 「ふむ。……だが、昨日の俺が何をしたのか、忘れた訳ではあるまい?」 「あ!」 ハドラーに言われてようやくルイズは気が付いた。 昨日ハドラーが唱えた魔法は非常に大規模であり、死人こそいなかったものの、負傷した者はかなりいた。中には同じクラスの生徒も入っていたかも知れない。 それ以前に、昨日のハドラーの恐ろしさをを垣間見て平然としている者などまずいないであろう。 「……まあ、それでも着いて来いと言うのであれば「わ、わかった。わかったわよ!」 どこか愉快そうに喋るハドラーをルイズは全力で遮った。そのまま今日何回目になるのかわからないため息を吐く。 「はぁ……。じゃあ、ここで一旦解散するわ。昼食前にまた落ち合う事にしましょう」 「ああ。ではな」 ルイズの提案に頷いたハドラーはローブを翻し、そのままルイズとは別の方向へと歩いて行った。 その背中をルイズは力無く見送った。自分の視野の狭さを自覚してしまい、思わず頭を抱える。 「ああ~もう!……使い魔の方が状況を理解しているなんて、これじゃどっちが主人かわからないわよ!」 恐ろしく強い上に、冷静で頭も切れる。昨日はああ言ってしまったものの、あの男を本当に自分に従わせられるのだろうか? 早くも弱気になりかけたルイズはそんな事を考えながら、とぼとぼと教室へ向かうのだった。 前ページ次ページ虚無と爆炎の使い魔
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12 幕間 『日常』 前ページ次ページ虚無と獣王 ルイズがクロコダインを召喚してもうすぐ一週間が経とうとしている。 召喚の儀式から謹慎終了までは色々あって実に落ち着かない日々だった。 そんな主従の、フェオの月、ティワズのダエグはこんな感じで始まる。 クロコダインの朝は早い。 厩舎で寝泊まりする彼であるが、概ね日の出と同じ位に目を覚ます。 水場で顔を洗うと、クロコダインは学院の敷地を一周する。夜間何も異常がなかったかを確認する為だ。 夜の警備を担当している衛兵も既に彼の事は知っているので、欠伸を噛み殺しながら夜は何もなかったと話す。 使い魔たちは大体同じ時間に起きて来るので、朝の挨拶をしながら向かうのは中庭である。 今年度の使い魔で一番の大物(体長的な意味で)の風竜がいる時は他の使い魔たちと共に世間話に興じ、いない時はグレイトアックスを使ったトレーニングを行う。 最初は風竜がいる時もトレーニングをしていたのだが、やたらとお喋りな彼女が矢継ぎ早に話しかけて来る為、話し相手に徹する方がいいと判断した。 ここのところ竜の姿は見えなかった為、デルムリン島にいた時の様に斧を振るうクロコダインであったが、今日は広場に彼が着いたすぐ後に空から蒼い影が舞い降りてくる。 背に乗っているのは風竜の主である眼鏡を掛けた少女だ。 使い魔とは対照的に無口で無表情なその少女がクロコダインに黙って頭を下げる。 「ああ、おはよう」 朝の挨拶と判断したクロコダインがそう言うと、後ろに控えた風竜がきゅいきゅい!きゅーい!と人間には解読できない声を上げる。 「おはようなのね、王さま! シルフィおなかすいたのねー!」 風竜に限らず、他の使い魔たちも皆こぞってクロコダインの事を王と呼ぶ。 面映ゆいしお前達はオレの部下じゃないから止めてくれないかと言ってはいるが、聞き入れられた例はない。 「おはようシルフィード。もう少ししたら厨房までいくからそれまで待っていろ」 「ありがとなのね王さまー!シルフィがいくら言ってもお姉さまごはんくれないのねー!もうほんとにいじわるしてからにー!」 シルフィードと話した回数はまだ片手に余る程度だが、ここから怒涛の様な主への愚痴と惚気が始まるという事は学んでいる。 クロコダインは厨房へ行くのを少し早くする事にした。 「よう! 今日は早いな『我等が声』!」 厨房裏口に現れたクロコダインを迎えたのはコック長マルトーのそんな一言だった。 もとよりマルトーはクロコダインに悪い印象を持っていた訳ではないが、先日の食堂パイ投げ事件は彼に何か感銘を与えたらしく、『我等が声』『我等が斧』などと呼ぶようになっている。 マルトーだけではなく下積みのコックたちやメイドまでそんな二つ名で呼ぶのだが、呼ばれる方はどう対応していいのか非常に困る。 面映ゆいしあれは子供の悪戯を叱っただけの事だから止めてくれないかと言ってはいるが、聞き入れられた例はない。 「シルフィードが腹を減らしていてな。何か食べさせるものはないか?」 マルトーは、なりはでかいがへんに子供っぽい印象の竜を思い浮かべた。 「ああ、あの青いのか。残り物で良きゃあ持っていってやってくれ。あんたの分はどうする?」 「オレはもう少し後で良い。毎日世話を掛けるな」 クロコダインの食生活は、召喚前より遥かに恵まれているといえる。食堂の一件以降はとても賄い食とは思えない豪華な料理が出てくるので有り難いが困惑もする。 「なぁに、遠慮はいらねえってもんさ。他でもねぇ、貴族の坊主どもにあんな啖呵が切れるアンタのメシなんだぜ。もっと豪勢にしてもいい位だ」 だからアレは少し叱っただけなんだがというクロコダインの主張は今回も聞き入れられず、逆に「謙遜する辺りが大人物だ」という評価しか得られなかった。 シルフィードに食餌を渡し、きゅいきゅいと喜ぶ声を背にクロコダインは学生寮へと向かう。 洗濯場を覗くが、シエスタは洗濯当番ではないらしく姿は見えない。 ルイズとはいつも学生寮の入口で待ち合わせをしている。もう起きているだろうかと思いながらクロコダインは歩を進めた。 まだ起きていなかった。 「うー……もう…食べられな……」 ベタな寝言ですね、とシエスタは思う。 彼女はいつもルイズを起こしに来る訳ではない。時間が空いていれば訪室するが、どちらかといえば仕事をしている事の方が多かった。 そろそろ起こそうか、と布団に手を掛けると、再び寝言が飛び込んでくる。 「…た、食べられないなんて言わせないんだからねっ……」 (夢の中でも素直じゃない、というか一体どんな夢……?) 疑問に思いつつ、シエスタは礼儀正しく掛け布団を勢いよく剥いだ。 「ぅひゃう!?」 愉快な奇声を上げて跳ね起きるルイズに対して一礼。 「おはようございます、ミス・ヴァリエール」 「シシシシシエスタ! ちょっとやっていい事と悪い事が!」 この起こし方は抜群に寝起きがいい、と脳裏に刻みつつシエスタは返事を返す。 「え、何か問題でしたでしょうか?」 不思議そうな顔をするシエスタにルイズは顔を真っ赤にして叫んだ。 「問題も何も、貴族相手の起こし方じゃないでしょ!」 「そんな!? 貴族様相手にするんですから物凄く丁寧ですよ! 田舎の弟妹なんかあんなもんじゃすみませんし!」 真顔で返されたルイズは思わず怒るのを忘れてしまった。 「いや、比べる対象が間違ってるような気がしないでもないんだけど、取り敢えず弟さん達はどういう扱いなの」 問われたシエスタは、んー、と天井をしばらく眺め、 「起きない場合はまず腕の関節を逆に」 「ゴメンネ、やっぱり言わなくてもいいわ」 「ちなみに寝ない場合は後ろに回って腰に手を回し後方にそのまま投げつけ」 「言わなくてもいいんだってばっ!」 田舎の平民マジ怖い、そう思うルイズであったが、単にシエスタの家が特殊だと知るのはもっと後の話になる。 そんなこんなでルイズが制服に着替えて部屋を出る頃には、クロコダインは待ち合わせ場所に到着しているのが常だ。 「おはようクロコダイン! 待った?」 「おはよう、ルイズ。今来たところだ」 会話だけ抜粋するとデート前の恋人同士の様だが、実際にはピーチブロンドの華奢な少女と赤銅色の鱗の獣人が朝の挨拶をしているだけであった。 2人はこの時間に今日の予定を打ち合わせる。ルイズは当然のことながら授業に出るのだが、使い魔は別に出なくても構わないからだ。 ルイズの謹慎中、クロコダインはシエスタやマルトーに何か手伝えることはないか聞いて回っていた。ルイズからの許可も得た上の行動である。 2人とも大貴族の使い魔に仕事を振るのは躊躇われたのだが、本人が体を動かさないと落ち着かないと主張する為、薪を割ったり食材を運び込んだりといった力仕事を頼んだ。 クロコダインは何もしていないのに食事が出てくる生活はおかしいと考えており、どうもデルムリンでの生活が彼に勤労意欲というものを植え付けてしまった様だった。 昨日、つまりルイズの謹慎が明けて初めての授業にはクロコダインも付き添っている。 食堂で貴族の子弟を叱りつけた一件について使い魔如きが生意気なと反発する生徒も少なからずいるのだが、そういうのに限って表立って文句を言う度胸も無い。 これまでルイズを囃し立てる筆頭だったマリコルヌやモンモランシーも静かにしていた為、スムーズに授業は進行した。 教師たちにとって教室で睨みを利かす(様に見える)クロコダインは有り難い存在と言えるのかもしれない。 「それで今日はどうするの?」 「オレでも出来る仕事がないか聞いてこようと思う。なかったら授業に参加という事にしたいんだが」 「……授業はつまらなかったかしら」 わたしと一緒にいるのはつまらないのか、とは言えないルイズであった。 「単に体を動かしている方が性に合っているだけだが、そういう事なら授業を選択するとしようか」 もう少し素直に発言してくれと思いつつ、あっさり前言を翻すクロコダインであった。 「そそそ、そ、そういう事ってどういう事なのよ!?」 「どういう事なのだろうなあ」 結局主人に対しては甘く、今日も授業参観するクロコダインであったという。 放課後、ルイズはクロコダインと別れて図書室に向かった。 学院長とコルベールに許可を得て、教師しか閲覧できない『フェニアのライブリー』にも今の彼女は入る事が出来る。 ルイズが探すのは召喚に関する本だ。 クロコダインを必ず元いた場所に帰すと誓った身として、これは当然の事であるとルイズは考えていた。 しかし、相手は30メイルもの大きさの本棚にぎっしりと詰まった大量の本である。そして本棚は壁際に幾つも幾つも並んでいるのだ。 おまけに魔法が爆発という形でしか発動しないルイズは、高い場所の本を取る事が出来ない。 故に、彼女は助っ人を頼むことにした。 余り話したことが無い相手な上、ルイズとは違う意味での問題児で取っ付きにくい人物であったが、思い切って話を持ちかけると予想に反して快諾してくれた。 「待たせた」 そう言って現れたのは、クラスメイトのタバサである。 彼女に示した条件は、一緒に本を探し高い場所の本は取って貰う事、その代わりルイズが調べ物をしている最中はライブラリー内の好きな本を読んでいていいというものだった。 図書室の主、知識欲の権化たるタバサにとっては好条件だった様で、無表情ながらもどこか嬉しそうだとルイズは思う。 「悪いわね、都合のいい時だけで良いからよろしく」 「構わない。こちらも貴女に用があった」 「用?」 全く思い当たる節のないルイズに向かって、タバサはマントの影から一冊の小冊子を出した。 手にとって内容を確認したルイズは、愕然とした面持ちでタバサに問いかける。 「こ、これってまさか……! 噂には聞いていたけど、本当に実在したというの……!!」 タバサは頷き、言葉を重ねた。 「そう、『会』は実在する。わたしは会員として、貴女をスカウトに来た」 彼女が言う『会』とは一体何か。それを語るには女子寮で密かに語り継がれる噂話の事から説明しなければならない。 いわく、トリステイン魔法学院には限られた女生徒しか入る事の出来ない秘密結社が存在する。 いわく、その結社の名称は『格差を是正し、資源を豊かにする会』というが、長い上にセンスが無い為『会』とだけ呼ばれている。 いわく、その『会』は古来からの民間伝承から最新の魔法理論まで調査し、研究を重ね、実践するエキスパートの集まりである。 いわく、『会』に入る方法は会員からのスカウトのみで、会員は決して『会』の存在を漏らしてはならない為、信頼できる人物にしか声を掛けない。 交友関係が広くないルイズにすらこの様な噂が届いていたが、学校にありがちな作り話だとばかり思っていた。 まあ、ホントにあるなら是が非でも入りたいと考えているのも事実だったが。 そんな噂話を聞いてから一年弱、今目の前にその会員と名乗る同級生が立っている。 「問おう。貴女は『会』に入る意思はあるか」 「答えを言う前に、ひとつだけ聞かせて」 ルイズは一旦言葉を切り、タバサに真剣な眼を向けた。 「どうしてわたしをスカウトしようと思ったの?」 答えるタバサもまた、真剣であった。 「アルヴィーズの食堂で、貴女の言葉を聞いた」 そう、ルイズは謹慎の原因となったあの騒ぎの中で、身体的特徴をあげつらう女生徒にこう言っていたのだ。 『どどどどうしてここここで胸の話題が出てくるのよ関係ないじゃないそそそんなに胸がありゃいいってもんじゃないわよ牛じゃあるまいし全くふんとにこれだからゲルマニアンはッ!』 騒ぎに加わる事なく、我関せずを決めこんでハシバミ草サラダを補給していたタバサの耳に、その言葉は凛とした響きを持って届いたのである。 いつの間にか、ルイズの瞳には涙が浮かんでいた。 わたしの言葉が聞こえていた。わたしの言葉を聞いてくれている人がいた。わたしの言葉で心を動かしてくれる人がいた。 その事が無性に嬉しかった。 「ありがとう、わたしをスカウトしに来てくれて。喜んで入会するわ」 ルイズは笑顔で礼を言うと、タバサはふるふると首を振る。 「わたしたちとしても、創設者兼名誉顧問の血縁者が入会するのは喜ばしい事」 返ってきた意外な言葉にきょとんとするルイズに、彼女は渡した小冊子を捲らせた。 『 序文 このハルケギニアの地には様々な格差が存在していますが、最も憎むべきはただ大きいだけの脂肪分を巨乳と尊び、微かな乳と書いて微乳と呼ぶべき存在を貧乳と称し蔑んでいるこの風潮であると言えます。 わたしはこの現状を憂慮し、微乳でも誇りを持って生きていける社会を創造する為、この会を立ち上げました。 しかし、長年蔓延ったこの格差と風潮は一朝一夕で是正できるものではありません。 従って、個人の資源を最大限に発揮させる事で少しでも胸を大きくさせる研究も同時に進行させるのが、わたしが始祖より与えられた天命であると考えています。 わたしたちは揉まれれば大きくなるという古来からの民間伝承から、アカデミーで研究される様な最新の高度な水魔法による肉体改造までをも調べ上げ、その身で実践していかなければなりません。 恵まれし者達は、私たちの行動を見て笑うでしょう。しかし、嘆いてはいけません。 わたしたちの歩みは遅くとも、決して後退する事はなく、歩き続けてゆけば必ず約束の地へ辿り着くのですから。 ブリミル暦 6230年 エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール 』 ルイズが床に突っ伏したのは言うまでもない。 結局その日、召喚魔法について調べる事は当然のことながら出来なかった。 夕食の後、昨日に引き続き有志による近接格闘訓練(もしくは使い魔の運動不足解消計画)が始まった。 但し、昨日と違うのは、女子生徒の見学者がいるという点だ。 「あんたたち何しに来たのよ」 監督ルイズの問いに最初に答えたのはキュルケである。 「えー、何か面白そーなことやってるから、ちょっと野次でも飛ばそうと思って」 けらけらと笑うキュルケの横で、本から目を離さずにタバサが言う。 「その付き添い」 さらにその横にはギーシュと一応仲直りしたと思しきモンモランシーがいて、 「万が一怪我したら直してくれって頼まれたのよ。かすり傷程度なら水の秘薬なしでもいいだろうし、魔法の実践にもなるし」 「へー? てっきりわたしはギーシュがついにルイズにまで手を出したかと疑ってここに来たのかと思ったんだけどー」 「そんなわけないでしょっ!」 「ていうかルイズにまでって何よまでって! あまりふざけた事言うと酒瓶持ったシエスタに部屋強襲させるわよ」 「うん、いいわよね魔法実践! がんばってモンモランシー!」 外野が馬鹿を言っている間にも、男子学生たちは順調に張り飛ばされていた。 反省会(もしくは今日のツッコミ)が終了し仲間たちが解散した後、ルイズはクロコダインに尋ねた。 「明日は虚無の曜日だからちょっと王都まで行ってくるけど、クロコダインは何か買ってきて欲しい物はある?」 本当は学院から出た事のないクロコダインと共に王都まで行くつもりのルイズであったのだが、二つの要因からそれは諦めざるを得なかった。 先ず、王都までは馬を使って移動するのだか、学院にはクロコダインが乗れる馬が無いという事。 学院には、というよりハルケギニアには、と言った方が正確なのだが。 体長3メイルの巨体を乗せて走る馬というのは、正直モンスターの類であろう。 次に、未知の獣人が王都に出現するのはあまり宜しくないという事。 使い魔慣れしている学院だからこそクロコダインも問題にならない訳で、逆に魔法に詳しくない平民が大多数の王都で問題なく過ごせるとは限らない。 下手すれば王城から魔法衛視隊が出動しかねないのだ。 そんな訳で、せめて何か希望の物があれば買ってこようというのがルイズの思惑であった。 「そうだな……。何が売っているのかオレには判らんが、長めの革紐の様な物があれば有り難いか」 クロコダインは傍らの戦斧を見ながら言った。 「こいつを持って歩く時は必ず片手が塞がってしまうのでな。丈夫な紐があれば背負う事も出来る」 「革紐かー……。馬具を扱う店なら置いてあると思うんだけど」 考え込むルイズの頭を撫でながら、クロコダインは言う。 「無理をする事はないぞ。大至急必要だというものでもないからな」 「いいわよ、わたしも乗馬用の小物とか見たいと思ってたし」 「そうか、では頼む」 そんな事を話しているうちに、就寝時間が迫ってきた。 昨日の様にルイズを肩に乗せ、クロコダインは学生寮を目指す。 こうして凸凹主従の一日は暮れていくのだった。 前ページ次ページ虚無と獣王
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前ページ次ページ虚無と獣王 14 捜索隊と獣王 トリステイン魔法学院から見事に脱出した土くれのフーケは、逃走経路として以前から当りをつけていた森の中で悪戦苦闘していた。 「ったくどうなってんだいこいつは!」 彼女が睨みつけているのは先程盗んだばかりのマジックアイテムである。 『神隠しの杖』という名が付けられているそれは、通常のアイテムとは異なりフーケが魔力を通しても反応を示さなかった。 スキルニルと呼ばれる魔法人形の様に血液がキーになる訳でもないとなると、おそらく使用するには特殊な条件が必要となるのだろうとフーケは判断する。 発動させるには他のマジックアイテムが必要になるとか、ある一定のポーズを順番に取っていかないと発動しないとか。 問題は、その条件とやらがさっぱり判らないという事である。 一応念の為に盗んできたインテリジェンス・ソードにも尋ねてみたが「えー、知ってる訳なかろ。剣だぜ俺」との返答だった。心底埋めてやりたいと思うが我慢する。 大抵のマジックアイテムなら後腐れなく捌く自信がフーケにはあったが、使用方法の判らないアイテムに気前良く金を払ってくれるモノ好きな好事家に心当たりはなかった。 取り敢えず、深呼吸を二回して気持ちを落ち着かせる。焦りや怒りは何も生み出さない。 今、自分が取れる行動パターンは2つ。 1・マジックアイテムを売りつけるのは諦めて故郷に帰る。 2・学院に戻って誰かからマジックアイテムの使用方法を聞き出して来る。 1は消極的な安全策で、自分の身は確実に守れるが内戦状態の故郷に残した義妹の安全は守りにくい。 2は大騒ぎの学院に戻る事になりリスクはかなり大きいが、その分リターンも大きくなる。 しばらく悩んだ末、フーケが選択したのは2の案だった。 せっかく盗んだ物を使い方が判らないからと言って諦めるのは惜しかったし、あの騒ぎの中でも自分の正体はバレていないだろう。 適当に理由をつけて学院長あたりから使用方法を聞き出してくればいいだけの事だ。 そうひとりごちて、フーケは残り少ない精神力で馬の形のゴーレムを作った。ここまで逃げて来る時にも使用したモノだ。 時間はまだ深夜には至っていない。さっさと学院に戻って少しでも休まなければ。 2つのマジックアイテムを下見の時に見つけていた無人の小屋に隠し、フーケは元の職場に舞い戻るのであった。 翌早朝から始まった事実確認の為の会議は、一時間も経たない内に責任の押し付け合いの場と化していた。 ルイズ達は第一発見者という事でこの会議に参加させられていたが、事情を説明する気力は既に尽きようとしている。 一応仮眠はとったものの、満足に眠れたとは言えない状態なのに宝物庫で教師達の言い争いを聞かされているのだから、それもまあ無理のない話と言えよう。 ルイズが欠伸を噛み殺しながら仲間達を見ると、ギーシュ、ギムリ、マリコルヌは既に夢の中へと旅立っていた。 レイナールは生真面目な性格の為か起きてはいたが、その眼は擦り過ぎて赤くなっている。 キュルケは授業中にもたまに披露している奥義『眼を開けたまま寝る』を発動させており、タバサに至ってはどこからか取り出した本を一心不乱に読んでいた。 唯一眠気を見せていないのはクロコダインだけだが、これはもともと生物としての耐久度が違い過ぎるだけの話だ。 クロコダインは使い魔という事で数には入っていないだろうから、まともに説明できそうなのはわたしだけね、と思うルイズだった。 それにしても眠い。いや寝ちゃダメ、ちゃんと先生たちに報告しなきゃ、でもタバサに次の会報の原稿を頼まれてるのよね。 あれも早く考えなきゃ、やっぱり巨乳の反対語は貧乳じゃなくて微乳だと思うのよ姉さまも書いてたけど、ああ壁の穴から入ってくる風が気持ちいーなー眠いーでもねちゃだめー、ちゃんとせんせーたちにー…… ハッと意識が戻る。ついうっかりと眠ってしまっていたようだ。まだ何分も過ぎてはいないのだろうが、どうもマリコルヌの軽い鼾で目が覚めたようだった。 しかし、ほんの数分でも休息を取った事で眠気からは解放された。覚醒のきっかけになったとはいえ、小太りのアレと同レベルにだけはなるまいと固く心に誓う。 ふと気が付くと、教師達はいつの間にか責任問題から誰かの尻を撫でるの撫でないのという心底どうでもいい話題に熱中していた。 帰ってもいいだろうかと真剣に思うルイズに、ようやく声が掛かったのは更に15分程経過してからである。 尻の話が終結したのか、もしくは話を逸らしたいのか、オールド・オスマンが第一発見者に事情を聞こうとしたのだ。 それが本題なのにここまで放置されていたのよね、とルイズはうんざりする気持ちを抑えつつ昨夜目撃した事を話し始める。 途中、クロコダインやレイナールが補足しながら話し終えるのに10分かかった。 ちなみに宝物庫の壁を破壊したのはフーケのゴーレムという事になっている。正直に失敗魔法でふっ飛ばしましたと言っても信じては貰えなかっただろうが。 話を聞き終えた学院長は思わず頭を抱えていた。 フーケの後を追おうにも、手掛かりが全く無いからである。 せめて逃げた方角だけでも確認したかったのだが、フーケの作った鉄製のドームの所為で視界が塞がれていた為、それもかなわなかった。 王室には届け出たくないんじゃよなー、だって色々うるさいしぃ、と教育者らしくない事を考えているオスマンである。 これからどうするべきか、正直手詰まりなんじゃないかという空気を一変させたのは、今まで姿を見せていなかったミス・ロングビルだった。 なんと彼女は昨夜の戦いを自室から目撃し、逃げていくフーケの姿を確認したというのである。 慎重に後を追った彼女はフーケに追いつけはしなかったものの、かの怪盗が潜伏していると思われる小屋の在り処まで突き止めていた。 正に三面六臂の大活躍であり、学院の責任者から見れば女神に等しい仕事振りである。 「では王室に報告して早く兵を差し向けてもらいましょう!」 そんなコルベールの発言をオスマンは一蹴した。 今から報告をしていてはフーケに逃げられてしまうだろうし、そもそもこれは学院の問題なのだから解決するのも学院の人間でなくてはならないというのである。 教師達の中には「それってただの保身じゃないのか」と思う者もいたのだが、賢明にも口には出さなかった。 さて、こうなると問題は誰がフーケを捕えて秘宝を取り戻すかである。 今までどんな厳重な警備や優秀な追跡者を出し抜いてきた怪盗を捕縛したとあれば相当な名誉だ。 だが最低でもトライアングルクラス、もしかしたらスクエアの可能性もあるメイジを相手にするとなるとかなりの危険を伴う。 名誉と危険を天秤に掛けた結果として、捜索隊に名乗りを上げる教師はただの1人も存在しなかった。 普段は己の系統を自慢し、実際にスクエアの実力を誇るギトーですら俯いたまま杖を掲げる気配はない。 「どうした? フーケを捕えて名を上げようという貴族はおらんのか!?」 オスマンが挑発に限りなく近い檄を飛ばすが、教師達は顔を見合せるだけで動こうとはしなかった。 そんな時が止まったような重苦しい空気の中、ただ一人動いた者がいる。 凛とした表情で杖を掲げたのはルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエール、通称『ゼロ』のルイズであった。 当然の如く大騒ぎになった。 学生が、それも始祖の血に連なる国内でもトップクラスの大貴族の娘が盗賊退治に乗り出すと言い出したのだから、大騒ぎになるのは当然と言えるが。 これまで発言の無かった教師達が口を揃えて危険だ、まだ学生なのに、教師達に任しておけという声が飛ぶがルイズは意に介さない。 まだ学生なのも危険である事も充分判っているが、それを踏まえた上で行かなければならない理由が彼女にはあるのだ。 大体捜索隊に立候補もしないのに教師に任せろと言われても何を任せればいいのか困るので、その旨を指摘したところ相手は黙ってしまった。 ルイズは思う。黙られても困るものだなあ、と。 困っていたら、ルイズの隣の席で寝ていた筈のキュルケがいつの間にか杖を掲げていて、ますます騒ぎが大きくなった。 参加動機が「ヴァリエールが行くのにツェルプストーが行かない訳にはいかない」というのは単に張り合ってるのか、それとも違う理由があるのか。 もっとも表情はつまらなさそうにしていて、明らかにルイズが立候補しなければ寝て過ごしていたのだろうと言う事が判る。 更に読んでいた本を閉じながらタバサが無表情のまま杖を掲げた為、宝物庫の中はますます騒がしさを増した。 ただ一言「心配」とだけ口にした彼女をキュルケは抱きしめ、ルイズはぎこちなく礼を言い、鼾をかいていた筈のマリコルヌは何故かその光景を見てハァハァ言い始めたが皆で無視する。 一部の教師はそれでも彼女たちを止めようとしたが、それを遮ったのはオールド・オスマンだった。 いわく、タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士であり、キュルケは優秀な軍人を多く輩出した家系の出で自身の魔法も強力であると。 そしてルイズの名を上げて、一瞬詰まり、誤魔化すように周囲に目をやって、ほらあんなに強そうな使い魔を召喚しているし的な事を威厳たっぷりの口調で言った。 ルイズとクロコダインのじっとりとした視線を、齢三百歳とも言われる偉大なメイジは華麗にスルー。結果として威厳は落ちているのに彼はまだ気づいていない。 実はオスマンは、ルイズの使い魔に刻まれたルーンの意味を確かめるのにちょうどいい機会ではないかと、そんな事を考えていたのだ。 もちろん、万が一の事を考えてある種の『保険』を掛けるつもりでもあったのだが。 そんな内心はおくびにも出さず、オスマンはルイズ達に向きなおって言った。 「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」 「杖にかけて!」 3人が真顔で唱和すると、オスマンはロングビルに馬車の準備と道案内をするように命じた。快く了承したロングビルが宝物庫を後にする。 「わたしたちもちょっと着替えてこない?」 ロングビルの背中を見ながらそう主張したのはキュルケで、タバサもその意見に無言で同意した。確かに今の彼女達は学院の制服姿であり、フーケ捜索に相応しい格好とは言い難い。 ルイズとしても反対する理由はないので自室に戻ろうとしたが、クロコダインがその場を動こうとしないのに疑問を抱いた。 「どうしたの? クロコダイン」 ひょっとして勝手に捜索隊に志願したのを怒っているのだろうかと思ったが、どうもそうでは無い様で、彼はルイズを見るとこう言った。 「いや、オレには何が盗まれたのかサッパリわからんからな、お前達が着替えている間に詳しい事を聞いておこうと思ったのさ」 「あれ? クロコダイン、ひょっとして字が読めなかったの……?」 ルイズは壁に書かれたフーケの署名を視界の隅に入れながら質問した。 今まで問題なく会話が出来ていた為、文字に関してはこれまで全く気にしていなかったのだ。 「ああ、少なくともそこの壁に書かれている分は読めないな。オレの居た所の文字とは異なっているようだ」 クロコダインはそう言うと、ポンとルイズの頭を軽く叩いた。 「さあ、言いたい事は色々あるが時間が無い。早く着替えてきてくれ」 ミス・ロングビル、すなわち土くれのフーケは、厩舎に向かいながら心の中で始祖を呪っていた。 (ああもう、なんだって学生なんかが引っ掛かってくるんだい!) それもその筈、フーケの立てた目算は完膚なきまでに崩壊しているのだ。 彼女の予想は教師達が捜索隊に手を上げない所までは当たっていた。 幾らメイジとしてのレベルが高くとも彼らは所詮教師に過ぎず、何か特殊な訓練を受けている訳でもない。そんな人間は決して危険に飛び込むような真似はしない。 だがそんな中でも、生徒思いのコルベールや責任者であるオスマンなどは、最終的に自分が行くと言い出すとフーケは思っていた。 この2人ならマジックアイテムの使用方法を知っている可能性は高く、また自分に手を出そうとしているのが丸わかりなので適当にあしらいつつ情報を入手する自信もあった。 ところが蓋を開けてみれば、捜索隊のメンツは明らかにアイテムの情報など持っていない学生3人である。 (あー、やっぱクニに帰っときゃ良かったかなー……) 現在のフーケ、うしろむき48%。 しかし、いや待て、と彼女は思いなおす。 諦めるのはまだ早い。確かに今回は予想が外れたが、それなら予想が当たる様に計画を立て直せばいいだけの事だ。 フーケは限られた時間の中でいかに行動するか、急いで考えを巡らせ始める。 現在のフーケ、前むき67%。 もっとも、彼女のモチベーションは厩舎においてうしろむき100%に限りなく近付く事になるのだが。 着替えが終わり、厩舎を訪れたルイズ達が見たのは、2台の馬車であった。 1台は自分達が使う分だとして、では何故もう1台準備されているのか。少なくともクロコダインは馬車に乗る事は出来ない。 ひどくどんよりとした表情のロングビルに尋ねようとして、ルイズは馬車の周りに四つの人影を見た。 「やあ、遅かったじゃないか君たち!」 ロングビルとは対照的に、ひどく爽やかな笑顔でギーシュは手を上げる。 「……なにやってんの、あんたたち」 「見て判らないかい?」 ギーシュの後ろでは、ギムリとレイナール、マリコルヌが馬車に馬を繋いでいた。 「まさか一緒に行くなんて言い出すんじゃないでしょうね」 「まさか! 僕達にそんな度胸があると思っているのかい?」 聞き様によってはえらく情けない事を造花のバラを咥えつつのたまうギーシュに、ルイズは半目で質問した。 「じゃあなんで馬車なんて用意してるのよ」 「決まってるじゃないか! もちろんこれから森にピクニックに向かうからさ!」 「…………は?」 あまりと言えばあまりの言葉に、ルイズだけではなくキュルケやタバサまで呆然とする。 当のギーシュはそんな様子など意にも介さず言葉を続けた。 「だってこんなにも天気が良いんだよ? とても授業なんて出てる場合じゃないね、親しい仲間と一緒に遊びに行くべきだと僕の中の始祖がそう仰ったのさ!」 始祖も6000年後にこんな愉快な言い草の種になろうとは思いもしなかっただろう。 「……まあ前半だけは同意してもいいけど、男4人でピクニック? 淋しいにも程があるわね」 まだ呆然としているルイズの横からキュルケが突っ込むと、ギーシュは大仰に肩をすくめてみせた。 「ま、たまには男同士の友情を深めるのもいいと思ってね。正直女の子との遠乗りはもう懲りたよ。毎回野郎ばっかりなのは御免だけど」 「それは生まれてこのかたオンナノコと出かけた事の無い僕に対する挑戦? 死ぬの? ねえ、死ぬの?」 「落ち着けマリコルヌ! 早まるんじゃない!」 馬車の後ろからそんなやり取りが聞こえてきたが、友情を深める為に敢えて無視する。 「つまりそういう事さ。まだどこに向かうかは決めていないから、偶然君たちと同じ方向に向かう事があるかもしれないが、あくまでそれは偶然だからそのつもりで」 悪びれる様子もないギーシュに、ルイズは一応警告した。 「はっきり言っておくけど、これってかなり危険な事よ。ついてくれば最悪の場合命に関わるし、学院からもいい顔はされないわ」 「ただのピクニックなのに?」 ギーシュはピクニックに行くという主張がよほど気に入ったようだった。 「まああそこで僕たちまで捜索隊に立候補していたら流石に止められていただろうからね、世の中には体裁という物も必要という事さ。あ、これはただの独り言だけど」 「寝た振りしながら風の魔法でこっそり内緒話をしていたなんて事実はないしな。言っとくがこれも独り言だ」 馬車の準備を終えたレイナールとギムリが、独り言とはとても思えない独り言を言う。 つまるところ、彼らはどうしようもなく貴族だと言う事に、ルイズは気付かざるを得なかった。 「ピクニックなら仕方ないな。ちゃんと弁当は持ったのか?」 それまでシルフィード、フレイムと一緒にいたクロコダインがニヤリと笑いながら言うと、マリコルヌが籐のバスケットを掲げる。 「食堂に無理を言って作って貰ったよ。パンに適当な具材を挟んだだけらしいけどね」 「つまり、準備も覚悟も出来ているという事だ。ルイズよ、お前達と同じ様にな」 クロコダインは真剣な眼でルイズを見た。 「ルイズ、お前に並々ならぬ覚悟があるのは判る。だが、前にオレが言った事は忘れてくれるなよ」 「────大丈夫。ちゃんと覚えてるわ」 それは数日前の訓練後に交わした言葉。戦う目的、撤退という選択、そして誇りの意味。 「貴族としての誇りと義務を、わたしは貫くわ」 「ならばオレは主を守ろう。使い魔として、武人としてな」 2人は杖と戦斧を掲げ、互いに笑みを浮かべるのだった。 前ページ次ページ虚無と獣王
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大いなる空の墓場58 14Fゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (19)ダイ 残された夢の世界61 14Fゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (47)コハル 残された風の世界64 14F敵無からゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (8B)ダイ とどろく獣の迷宮70 14Fゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (83)ダイ 大いなる空の遺跡72 14Fゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (7D)ダイ 残された影の迷宮74 13Fゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (7F)アイザック 見えざる獣の迷宮74 15Fゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (5F)ダイ (75)アイザック とどろく大地の迷宮81 13F敵無からゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (0B)アイザック とどろく空の迷宮82 13Fゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (14)ダイ (7D)ダイ・アイザック (93)ダイ 見えざる運命の遺跡85 16Fゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (79)アイザック とどろく獣の迷宮86 16Fゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (64)ダイ 見えざる光の迷宮86 13F敵無からゴールドマジンガ×ファイナルウェポン (17)アイザック
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4 ガイドと獣王 前ページ次ページ虚無と獣王 「コントラクト・サーヴァントは一度で成功しましたな、いや、実によかった」 そう言って胸を撫で下ろしたのはジャン・コルベールである。 もし契約の魔法が失敗していた場合、両者の顔が吹っ飛ぶ可能性が高かった訳で、事前に注意する間もなく電光石火の早業で唇を奪ったルイズには戦慄を禁じ得ない。いろんな意味で。 ルイズもクロコダインもそんな教師(42歳独身・花嫁募集中)の感慨には気づいてはいなかった。 「くっ、ガッ!」 左手を抑え、苦痛の呻きを漏らすクロコダインに、「だ、大丈夫!『使い魔のルーン』が刻まれているだけだから」と説明を入れるルイズ。 クロコダインよりも痛そうな表情を浮かべているのに気が付いていないのは当人だけである。 焼けるような痛みはすぐに収まったようだ。掌を握ったり閉じたりするが特に異常は感じられないように見受けられる。 ただひとつ、手の甲に見た事のない紋様が浮かんでいるのを除けばの話だが。 「これは……随分珍しいルーンのようですな。少し写させて下さい」 すかさずコルベールがルーンをスケッチする。教職20年は伊達ではないと言わんばかりの素早さだ。 「さあ、これで春の使い魔召喚の儀式は終了と致します。全員教室へ戻るように……と」 コルベールはルイズとクロコダインの方を見て言った。 「ミス・ヴァリエールは次の授業を免除とします。使い魔との『交流』に専念して下さい」 「了解しました。ミスタ・コルベール」 クロコダインについては正直解らない事だらけである。 ハルケギニアではないところから来た(らしい)、戦士だった(ようだ)、複数の国からスカウトが来ている(とは本人の談)。 ……何が何だかサッパリと言わざるを得ない。 クロコダインとしてもハルケギニアに関する知識はゼロ(イヤな響きだ、とルイズは思う)に等しい。 時間をあげるから相互理解に努めなさい、というコルベールの真意をルイズは正確に捉えた。 ぶっちゃけ授業なんかほっぽっといてわたしも『交流』に参加したいんですがねミス・ヴァリエールいち研究者として! ああはいはいそれはいいからさっさとみんな連れて教室に戻ってくれなさい先生というか邪魔スンナこのコッパゲール! いいですか『交流』の後で必ず私の研究室に来なさい何話したか聞きたいので無理ならレポートを後日提出の事! えー何ですかそれわたしだけ負担大きくないですか今まで最低点だった実技面での点数上乗せOKですよね当然! アイコンタクトと貼りついた笑顔で語りあうコルベールとルイズ。それにしてもこの師弟、以心伝心しすぎである。 教師と生徒の実に心温まる交流は短時間で終了した。しびれを切らした生徒たちが先に教室に向かい始めたからだ。 次々と宙に浮き、塔に向かう生徒たちを見て驚いた表情のクロコダインだったが、上から降ってきた言葉に顔を顰める。 「お前は歩いてこいよゼロのルイズ!まあどうせレビテーションもフライも使えないんだけどな!」 発言者は小太りの少年だった。少なくともルイズやクロコダインの手の届かないと思われる高度に至ってから野次を飛ばすあたりとってもチキン。 そしてルイズが近くに落ちていた石を拾い上げたのをみて焦って逃げるあたり心底チキン。 勿論彼はコルべールが自分の内申点の評価をダウンさせた事に気づいていない。 標的が射程圏外に逃れたのを見て短く舌打ちしたルイズは、気を取り直してクロコダインに呼びかけた。 「じゃあ、色々と話す事もあるから私の部屋に移動しましょう」 「そうか、では案内を頼もうか」 言うなりクロコダインはルイズをひょいと担ぎ、自分の肩に乗せあげた。 「きゃ!」 短く声を上げたのは、いきなりで驚いた事と、3メイルの高さから見る景色が新鮮だった事と、もうひとつ。 例え空を飛べずとも、この肩に乗れるのは自分だけだという事が分かったからだった。 寮に向かう途中、二人の『交流』が始まった。 「さて、使い魔というものは何をすればいいものなんだ?」 クロコダインの疑問は当然のもので、ルイズも答えを準備していた。 「そうね、まず使い魔は主人の目となり耳となる能力を与えられるの。つまり感覚の共有が出来るはずなんだけど……」 「……そんな感じはしないな」 「そうね……まあまだ使い魔になったばっかりだし、時間が経てばなんとかなるかもしれないし」 ポジティブシンキング、ポジティブシンキングと心の中で繰り返すルイズ。 「それから使い魔は主人の望むものをみつけてくるの。秘薬、ええと苔とか硫黄とかなんだけど」 「苔の種類などが判れば大丈夫だな。要は人が立ち入りにくい場所のものを取ってくるのが役目ということか」 一見すると爬虫類で暑すぎたり寒過ぎる場所は苦手なのではないかと思われるクロコダインだが、実際には炎天下の谷から北の大地での寒中水泳までこなす全天候型の戦士である。 「じゃあ今度見本を見せるわね。あと一番大切なのは主人を守る存在であること!その能力で主人を敵から守るのが一番の役目!」 これに関しては申し分ない使い魔だ、とルイズは嬉しくなった。 「……これは、ちょっと無理だな」 「そうね、正直想定外だったわー……」 学院付きのメイド、シエスタが乾いた洗濯物を配る最中見つけたのは、部屋の前で途方に暮れる小さな貴族と大きな使い魔の姿であった。 「あのー……どうなされました、ミス・ヴァリエール?」 「ひゃ!? ああシエスタか、邪魔だったかしら?」 「いえそんな事は……。ところで、えーと、こちらの方は……?」 どう声を掛けていいものやら、といった風情でクロコダインを見上げる。 「わたしの使い魔でクロコダインというの。ついさっき召喚したばっかりなんだけど」 「ああ!では魔法が使えるようになったのですねミス・ヴァリエール!それもこんなに立派な使い魔さんを!」 よかったー、と両手を掴み上下にぶんぶんと振るメイドに耳まで赤くしてルイズは言った。 「べべべ別にわたしの実力からすれば当然の事よ平民なんかに喜ばれるもんじゃないわあと無闇に貴族と親しくしちゃダメって言ったでしょう不敬よフケイ!」 相変わらず本心と出る言葉が乖離しておられるなあ、と思いつつシエスタは頭を下げる。 「大変失礼致しました、ミス・ヴァリエール。強引に話を戻しますけど部屋にも入らず一体どうなさったのですか?」 「強引に話を戻されたけど、『部屋に入らない』んじゃなくて、『部屋に入れない』のよ」 ルイズが、傍らのクロコダインを見上げて言った。 学院寮の部屋は貴族の子女が生活するのを考慮に入れてか、かなり広い作りになっている。もう一人くらいなら充分生活できるスペースがあるのだ。 しかし、部屋のドアは通常の、つまりは人間用のサイズであった。 そもそも2メイル×1.5メイルのドアを、身長3メイル×横幅もかなりのサイズの獣人が通れるわけがない。 ルイズはそんなサイズの生き物が召喚されるとは思っていなかった。 なんとなく小動物が召喚されるのではないかと彼女は考えていて、実はこっそりと部屋に寝床用の藁が準備してあったりもする。藁を持ってきたのは他ならぬシエスタだが。 「まあ話なんて何処でも出来るんだけど、寝るところはどうしたものかしら……」 悩むルイズにクロコダインが声を掛けた。 「別にオレは野宿でも構わんのだがな」 旅をしている最中は屋根のある場所で寝た方が少ないと言う使い魔の言を、主は一蹴した。 「ダメよ、さっきわたしは住む処と食べ物は提供すると言ったのだから。貴族に二言は無いわ」 えへん、と控えめサイズの胸を張る。張ったのはいいが代案がない。どうしたものかと考えるルイズに、今度はシエスタが声を掛けた。 「そういえば厩舎がひとつ開いていますけど、そちらを利用する事は出来ませんか?勿論ミス・ヴァリエールや使い魔さんがよければですけど」 先日、学院で移動用に飼われていた馬が転倒した傷が元で死亡していた。 無茶な乗り方をしていた学生が原因で、弁償するよう学院側から通知が行っているのだが、貧乏貴族の常で金が工面できずにいる為いつまでたっても補充がなされないと苦情が出ている。 馬と一緒かー、うーん、背に腹は代えられないかなー、でも臭いがついたりしないかなーと悩むルイズを尻目にクロコダインはあっさりと快諾した。 「シエスタといったか、ではそこで宜しく頼む」 「はい、後でお馬番に話を通しておきますね」 「……まあクロコダインがそう言うなら……」 そういう事になった。 「じゃあ学院の中を案内するから、その間にいろいろと話をしましょうか」 「そうだな。しかし一口に学校といっても、ここは随分広くて立派なものだ」 そんな事を言いながら二人は歩きだした。まず一番に向かったのは厨房である。 「そういえばクロコダインはどんなものを食べているの?」 「肉や野菜だな。生でもいいし火を通してもいい。人間が食べているものなら大丈夫だ」 「そうなんだー。じゃあそのように注文しておきましょう」 学生の食費は授業料の中に含まれているが、使い魔のそれは各主人が生活費の中から捻出する事になっている。 一口に使い魔といっても、かたや手のひらサイズのものから、かたや5メイル以上のものまでそのバリエーションは広い。 当然食事の量や種類も千差万別であり、かかる費用も違ってくるため一律で金を徴収する訳にはいかない、というのが学院側の主張だ。 大喰らいの使い魔や手に入りにくい食事を必要とする使い魔を召喚した場合、金周りの苦しい生徒にとっては大きな負担となる。 そんな場合『使い魔の甲斐性に任せる』つまり『自給自足』を強いる生徒もいるのだが、ルイズはそんな事をさせるつもりは全くない。 結果、コック長と話し合い、賄い食を大人3~4人前の分量で出すという事になった。 食堂を見て、教室を回り、図書室に立ち寄って、宝物庫の前を素通りすると、もう日は落ちかけていた。 なんかこっちの事ばかりでクロコダインの事は殆ど聞けなかったなあ、とルイズは思う。でもまあいいか、時間はたっぷりあるんだから、とも。 コルベール先生には悪いけど、報告もレポートも今日は勘弁してもらおう。疲れたし。 24回の魔法失敗と2回の魔法成功、半日かけての学院案内。疲れて当然ではある。 「食事は厨房の裏口に行けば貰えると思うわ。厩舎は火の塔を曲がったところにあるからゆっくり休んでねー……」 「ああ、そうさせてもらおう。随分疲れているようだが大丈夫か?」 「んー、だいじょうぶー」 ゆらゆらと揺れながら返事をするルイズに苦笑するクロコダイン。 「あしたの授業は使い魔のお披露目も兼ねているからー、朝食の前に部屋の前で落ち合いましょー……」 「それはいいが、部屋まで送っていかなくてもいいか?ふらふらしてるぞ」 「じゃあおねがいー」 ぽて、と使い魔に寄り掛かる小さな主人。顔には無防備な笑顔が浮かんでいた。 再び肩の上に担ぎあげるクロコダインに、半ば夢の中にいるルイズが言った。 「クロコダイン、これからもよろしくねー……」 少しの間に随分懐かれてしまったな、と思いながら、かつて獣王と呼ばれた男はこう答えた。 「ああ、こちらこそ宜しく頼むぞ、主どの」 前ページ次ページ虚無と獣王
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23 虚無と宰相 前ページ次ページ虚無と獣王 宝物庫でクロコダインを待っていたのは意外な面子だった。 呼びつけた本人であるオールド・オスマンは、この場にいて当然である。主であるところのルイズもまあいいとしよう。 しかし、なぜ王女と宰相が同席しているのか。部屋の隅に緊張した面持ちのギーシュがいるのも解せない話ではあった。 「ああ、呼びつけたりしてすまなかったの」 オスマンはそう挨拶したが、その顔色は優れているとは言い難い。 「いや、それはいいんだが……」 クロコダインも言葉に詰まる。 何か問題が起きたのだろうと思ってはいたが、まさか国のトップが絡んでいると言うのだろうか。 「ここまで来てもらったのは、ちと考えを聞かせて欲しかったからでの。まあ、それ次第では色々と動いて貰う事になるやもしれん」 浮かない顔つきのまま語り始めたオスマンを制して、クロコダインはルイズと並んで座っているアンリエッタを見つめた。 「その前に、そちらにおられるのはこの国の王女殿とお見受けするのだが……」 その言葉に、アンリエッタは優雅に立ち上がって一礼する。 「はじめまして、アンリエッタ・ド・トリイテインと申します。貴方の事はルイズから聞かせてもらいましたわ、頼もしい使い魔さん」 クロコダインも王女の前で片膝を付いて答えた。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔、クロコダインと申します。以後お見知りおきを」 クロコダインが王家の人間に敬意を示す様子に、ルイズたちは少し驚いていた。普段の豪放磊落で武人肌という印象とは違った姿を見た気分だったのだ。 その姿から粗野に見られがちなクロコダインだが、その実力を認めた者や女子供に対して礼を尽くすタイプである。 魔王軍時代は大魔王バーンや魔軍司令ハドラー、正義の使徒となってからはレオナやフローラ、ロン・ベルク、アバンといった面々に敬語で接していたし、占い師のメルルにも最初はお嬢さんと呼びかけている。 続いてマザリーニが短く自己紹介し、クロコダインもまたそれに答える。 その様子を見届けた後、オスマンは本題に入った。 「さて、こちらとしても大筋では話を把握しとるが何分よく聞き取れなんだ部分もあっての。ここはミス・ヴァリエールから事の次第を説明してもらえるかの?」 突然話を振られたルイズは思わずアンリエッタを見るが、王女がどこか複雑な表情を浮かべながらも頷いた為、さっき聞かされた事を順に話し始めるのだった。 ルイズが話し終わると、宝物庫は沈黙に包まれた。 王女と学生二名はともかく、クロコダインを含めた大人たちは難しい表情をしていたりこめかみを指で強く押さえていたり天井を見上げ何者かに対し呪いの言葉を小声で呟いていたりする。 まあずっとそのままでいる訳にもいかないと思ったのか、復活したオスマンはルイズに声を掛けた。 「……あー、ありがとうミス・ヴァリエール。実に分かりやすい説明じゃった」 「分かっているかと思いますが、この事は絶対に他言無用ですぞ」 次にやや強い口調でマザリーニが釘を刺す。キツイ言い方をしていいのならば、ぶっちゃけた話これは王家の恥と言っても過言ではない。 そんな重大事項を自覚もなしに吹聴される訳にはいかなかった。 そしてクロコダインが重々しい口調で尋ねる。 「オレは正直、国と国との情勢などには詳しくないのだが、この手紙を回収するのは学生にとってかなり厳しいのではないですかな」 ふむ、とオスマンは一応考える振りをしてから答えた。 「ま、一人前の兵士でも超キビシイじゃろうな」 「既にアルビオン王の手勢は1000名を割り込んでいます。対する貴族派は推定5万、今にもニュー・カッスルを攻め落とさんとしている様ですから」 加えてマザリーニが冷静に身も蓋も無い現状を指摘する。 「それでもっ! この任務は遂行しなければならないでしょう!」 悲観的な事しか言わない大人たちに業を煮やしたのか、思わずルイズは声を上げていた。 「不埒な貴族派がアルビオンを制したら次は我が国が標的になるのでしょう? その為にゲルマニアとの同盟を結んだのではないのですか!」 言外にアンリエッタの婚姻についての非難を込めながら、なおもルイズは言葉を重ねる。 「確かに困難な任務でしょうが、仕えるべき王家の為に、また力のない平民たちを守る為にも誰かが行かなければなりません」 ルイズの後ろではギーシュがうんうんと賛同の意を示し、アンリエッタは『おともだち』の熱弁に感激し目に涙を浮かばせていた。 ギャラリーがいなかったら確実に抱きついていた事だろう。 一方でマザリーニとオスマンは(若い衆は無闇に熱いな)等と思っていたが、そんな事はおくびにも出さなかった。 「確かにミス・ヴァリエールの言われる通り、誰かがアルビオンまで行く必要があります。ただ、私たちは常に最悪の想定をした上で動く事を求められます」 「ちなみにこの場合の『最悪』とは何か、ちと言ってみて貰えるかの?」 オスマンの問いに対し、アンリエッタとギーシュは「手紙の回収が出来ない」と答えた。 ルイズは上記2人と概ね同じ意見だったが、「同盟の話が流れてしまう」と付け加えた。 そしてクロコダインは、「任務が失敗して全員生きて帰ってこれない」と言った。 使い魔の答えにぎょっとするルイズたちを尻目に、オスマンは頷く。 「間違ってはおらんの。まあ全員の答えを合わせてなお足りない部分があるのも確かじゃが」 正直なところ、アルビオン行きが高い確率で死に繋がるという実感など持ち合わせていなかった学生2人と王女だったが、まだ付け加える様な不吉な事があるのかと思った。 そんな彼女たちに正解を冷静に告げたのはマザリーニである。 「手紙の回収に失敗し使者は全員死亡。ゲルマニアとの軍事同盟は破棄。更にトリステイン国内は王党派とレコン・キスタのシンパ、そしてヴァリエール・グラモン同盟軍の三つ巴の戦いになる」 一瞬の間を置いて、ルイズとギーシュは猛烈に反発した。 「お言葉ですが! 枢機卿はわが父の王家への忠誠をお疑いなのですか!」 「父様は国家の危機を前にして反旗を翻す様な真似はしません!」 特にルイズは父であるヴァリエール公爵から常々マザリーニに対する苦言を耳にしていた。 礼儀を重んじる父が一国の宰相に対し『鳥の骨』などという俗称を使っているのだから余程馬が合わないのだろうと思っていたが、こんな事を言うのならそれも納得である。 曖昧な噂で人を判断してはいけないという母の教えを守り、これまでマザリーニに含む処は持たないようにしてきたが、今この瞬間からルイズは『鳥の骨』を嫌いになる事に決めた。 ギーシュも似たような環境で育っていたので、同級生と似たような感想を抱いたようである。 一方マザリーニは2人の抗議に怯む様子もなく、あっさりと言った。 「ヴァリエール公爵もグラモン伯爵も王家への忠誠心は高く、その忠義は右に出る者なしと言っていいでしょう。しかし、彼らは同時に良き家庭人でもある」 「飲むたびに嫁と子供自慢聞かされるしの。特にヴァリエールの方は」 補足と言うか茶々を入れるオスマンに、マザリーニは表情を崩して言った。 「神に身を捧げた私に堂々と愛妻を自慢するのはやめてくれと老師から言っては貰えませんか。特に公爵の方に」 「言っても無駄な事は言わん主義じゃ」 「教育者としてそれはどうかと。話を戻しますが、もう目に入れても痛くないと公言している末娘がこんな事で非業の死を遂げなどしたら、速攻で王宮を落としにかかるでしょうな」 まあその前に堂々と声明文を送りつけてくるでしょうが、という最後の分析にオスマンはさもありなんと笑う。 ここで頭に血が昇っていたルイズがやや落ち着きを取り戻した。落ちこぼれの自分を父がそれほど重要視しているかはともかく、何故政敵である筈のマザリーニがこんな分析をするのか。 これではまるで2人は昔からの親友のように思えてしまう。 しかし、ついさっき嫌いになると決めた相手にそんな事を聞くのも憚られる気がする。一体どうしたものか。 ルイズがそんなある意味どうでもいい事を考えていると、隣の幼馴染(天然)が素直な疑問を口にした。 「貴方とヴァリエール公はあまり仲がよろしくないと聞き及んでいたのですが、違うのですか?」 「姫様、直球過ぎです!」 もう少しぼかしましょうと思わずツッコミを入れるルイズに苦笑しながらも、マザリーニは至極あっさり風味に答えた。 「仲は悪いですよ。少なくとも30年程前に1人の女性を巡って決闘騒ぎを起こす位には」 「……は?」 余りと言えば余りの答えに呆然とするルイズとギーシュ、そして驚きながらも微妙に目を輝かせるアンリエッタ。 そしてオスマンはどこか遠くを見つめながら呟く。 「ああ、そんなこともあったのう。今考えても酷いオチじゃったが」 「ええ、当の女性に『王宮での決闘は禁止事項でしょう!』とカッタートルネードを喰らいましたからな。全くもって酷いオチでした」 この時点でひどく嫌な予感がするルイズであったが、彼らの回想はまだ続いていく。 「切り刻まれながら天井に磔状態ってのも随分心が冷えるのう。あれはマジ死ぬかと思ったぞ」 「そう言えば颯爽と見届け役を買って出て颯爽と巻き込まれてましたな老師。しかし冷えるのは心だけですか? 私などは体温が急低下しましたが。その後で何故か始祖の姿を見た気がしますし」 「臨死体験などそうそう出来ることじゃないぞ? いい思い出になったの」 あっはっはと笑いあう中年と老年を、10代3名はアメイジングなモノを見る目で見つめた。 「まあそんな経緯もあって仲は悪いと言っていいでしょうね。娘の誕生日ごとに画家に描かせた絵を見せつけてここが私に似ているとか自慢するなど嫌がらせにも程があります」 「今はそれなりに落ち着いたが、昔は末娘が初めて立ったり初めて『とうさま(はぁと)』と言ったりしただけで呼び出されて飲まされてしこたま自慢聞かされまくったからのー」 「タダ酒が飲めるぜヒャッホウとか言って毎回喜々として参加されていたではありませんか」 「何か言ったか? 年のせいか最近耳が遠くなってな」 話題が逸れまくる大人たちを前に、ルイズは1人頭を抱えていた。 謹厳にして実直、理想の貴族像のひとつとして目標にしてきた父親像が今まさに音を立てて崩れ去って行く。それはもう凄い勢いでガラガラと。 そういえば、成績優秀眉目秀麗性格意地悪にして生真面目な上の姉が『格差を是正し、資源を豊かにする会』の創設者兼名誉顧問と発覚した時も脱力したものだったが、今回はそれ以上の衝撃であった。 「仲がいいのは良く判ったから、そろそろ話を戻してもらえるかな?」 主へのダメージをこれ以上増やさない為、という訳でもないのだろうがクロコダインが軌道修正を図る。 「やはり危険ですわ。ルイズ、わたくしの我侭で貴女を危険にさらすわけには行きません。誰か他の者に頼むことは出来ないのですか?」 マザリーニの暴露話はともかく、アンリエッタもかつて自分が出した手紙が『おともだち』の命に関わる事態になった事に慄き、幼馴染を止めにかかった。 「と、言われてものう」 ぬう、と悩むオスマンに対し、マザリーニは元来の怜悧さを発揮していた。 「正直に言えば、姫様の選択も全くの的外れという訳ではありません。例えば学生を使者に選ぶのは、今回の場合に限りますが有効ではあります」 「と言うと?」 素人同然の者を死地に送り込む事に抵抗を感じていたクロコダインが続きを促す。 「既に王宮内に敵勢力のシンパがいるのは確実ですが、我々はその全容を把握していません。しかし学院生ならば寮生活で外部との接触は制限されていますし、レコン・キスタと繋がっている可能性は低いと思われます」 「うっかり敵のスパイに手紙の回収なんぞ任せたらエライ目にあうわな」 オスマンが一応、と言う感じのフォローを入れる。レコン・キスタもわざわざ使いにくい学生を仲間にはしないじゃろ、とはあえて言わないでおく事にしたようだ。 マザリーニは更に続ける。 「次にヴァリエール嬢に依頼した点についてですが、使者の身分としては悪くありません」 ひょっとしたら、と言うかほぼ確実にアルビオン王家への最後の使者であり、非公式ながら王族への謁見が必要とされる任務である。まさか平民を当てる訳にはいかない。 王党派は最大限の警戒をしているであろうし、下手に下級貴族など送っては門前払いにされかねないのだ。 しかし、敵に通じていない大物貴族を使者にするとなると某公爵とか某元帥とかになる訳で、それはそれで問題である。大物すぎて使者にできない。 その点において、筆頭公爵家の一員であるルイズは割と絶妙な選択であると言えるだろう。当然その身分を証明する書類やらなにやらが必要ではあるが。 「その辺はまあ何とかなるじゃろ、というか、せにゃならん」 基本的に事務仕事が好きではないオスマンがため息交じりに言った。 「更にヴァリエール嬢たちは『土くれのフーケ』を見事に捕らえたという実績がある。多少の荒事ならば潜り抜けられる力を持っていると言えます」 いえだからそれは私だけの力ではないですし、というルイズの言葉は意図的にスルーされた。 ギーシュはともかくクロコダインが同行してくれれば、戦力と言う面では安心できるからだ。 「何より重要なのは、我々には時間がないという事です。不穏分子を見つける余裕がない以上、信頼できる人材は金剛石よりも貴重ですから、その他の要因にはこの際目を瞑りましょう」 そう言ってマザリーニは話を終えた。 「では、やはり私たちがアルビオンへ行った方が良いと、そう考えてよろしいですか?」 ルイズの確認にマザリーニは無言で頷いたが、内心では首を横に振っている。 これまで国を守るために数多くの者たちを死地に送り込み、それを後悔した事はなかった。しかし今回の一件に関しては別だ。 表向きは犬猿の仲だが実際には30年来の親友と、一度は還俗すら考えた片恋の女性の間に生まれた娘を危険に晒すというのは辣腕を謳われる彼にしても抵抗があった。 先程並べ立てた『いかにルイズが任務に適任か』についても、実際には理由を口にする事で自分自身を納得させようとしていたに過ぎない。 手紙は既にウェールズ王子の手によって破棄されているのではないかとも思うが、希望的観測は禁物である。 (これも偽善と呼ばれるのでしょうね) もしルイズの両親が個人的な知己でなければ何の感慨もなく彼女をアルビオンに送りだしている事に、マザリーニは気付いていた。 間違いなく自分は始祖の元には行く資格はない。宰相となってから幾度となく感じた事ではあるが今回は極め付けだと思いながら、マザリーニはルイズを見つめた。 「手紙に関しては回収に拘り過ぎないで下さい。状況によってはその場で廃棄しても結構ですし、回収不能と思えたら即座に引き返すように」 「お待ち下さい! それでは」 抗議しようとするルイズを手で制したのはクロコダインだった。 「手紙が回収出来なかったとして、宰相殿はどのような対応を取られるつもりかな」 「しらばっくれます。それは敵が卑怯にもでっちあげた偽書である、とね」 マザリーニは宰相らしからぬ表現でしれっと言い放った。横にいたオスマンが肩をすくめながら続ける。 「素直に『そうするしかない』と言わんか。ま、あちらさんも本物と証明する手段があるとは思えんがの」 幸か不幸か、アンリエッタはこれまで公式文書などに自筆のサインを残したことはない。当然見比べる事も出来ないので偽物と言い張れない訳ではないのだ。 無論、それでゲルマニアが納得するかどうかは別問題である。婚礼前にそんなスキャンダルが発覚した時点で破談を言い渡されてもおかしくはない。 アンリエッタもその事はしっかり認識していたが、それよりも今は幼馴染のこれからの方が心配だった。 そもそも彼女はルイズに何とかして貰おうと思っていた訳では無く、話の流れでつい口を滑らせてしまったに過ぎない。 故に彼女は手紙の奪還より生還を求めるマザリーニの意見には全面的に賛成した。 「ルイズ、貴女だけではなくこの学院の生徒たちは、これからのトリステインを支えていく大事な宝です。貴族としての矜持より、先ずは生き残る事を優先して下さい」 「姫さま……」 アンリエッタの心配そうな顔に、ルイズは微笑を返す。 「大丈夫です。ちゃんと手紙を回収して必ず帰ってきますから、どうかご安心を」 友人の言葉を聴いてもなお不安の晴れないアンリエッタであったが、ふと何かを思いついたらしく自身の右薬指から大きな指輪を外し始めた。 「これはわたくしが母君から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りです、どうか持っていって下さい」 「そんな! 大切なものではありませんか」 しきりに恐縮するルイズに王女はコロコロと笑った。 「大丈夫ですよ、もしお金に困ったら売り払って旅費に当てても」 そんな2人の少女が織り成す美しい友情シーンを、しわがれた声が水を差した。 「まてまてまてまてまてまてまてまて」 声の主は言うまでもなくオールド・オスマンなのだが明らかに余裕が無い。どれくらいないかと言うと、王族に対する敬意を忘れてしまう位。 「……あー、身分証明としてはある意味最適でしょうが、売り払うのは勘弁してもらえますか? それは初代トリステイン王が始祖より賜わった秘宝の一つなので」 もう何か疲れ切ったという感じのマザリーニが投げやりな補足を入れる。 そしてルイズは自分の掌にある指輪の価値に思わず引き攣った。つまりこれは6千年前より伝わるトリステインの国宝なのである。 始祖の祈祷書と並んで戴冠式などの国家行事に使用されるもので、こんなもの売ろうと思っても絶対に値は付かない。 「そそそそそそそんな貴重品を持たせないで下さい! 身分証明なら書類か何かでいいですから! お守りは姫様のお気持ち1つで充分ですし!」 正直触るのも怖い、という風情のルイズだったが、返ってきた言葉は非情だった。 「売ったり無くしたりしないのであれば、確かにまたとない証明です。王族の信頼を受けているという事にもなりますので持って行って下さい」 そんなご無体な、という内心を覆い隠しつつルイズは近くにいたが会話に入れなかったギーシュに声を掛ける。 「ねえギーシュ、私が無くすといけないからちょっと責任もって預かっててくれる?」 「ははは、これは君らしくもない事を言うじゃないか! まさかそんな大切なものを、この『青銅』がうっかり落とさないとでも思っているのかい?」 胸を張って言うことじゃないだろうとギーシュ以外の全員が思った。 かといってクロコダインに預けるわけにも行かない。戦闘時に矢面に立つ立場の彼が秘宝を持っていると、敵の攻撃等で指輪に傷がついたり紛失したりする可能性があるからだ。 消去法で自分が持つしかないと判ったので、仕方なく覚悟を決めたルイズは「お預かりします」と言って水のルビーを指に嵌める。 そんな光景を見ながら、クロコダインはこっそりと溜息をついた。 どうにも危険な場所に行きたがる傾向がある主だが、もちろん放っておくつもりは少しもない。 彼女が行くしかないというのなら、全力であらゆる危機からルイズを守る盾になるだけだと、クロコダインは決意を新たにするのだった。 「さて、概ね話しが纏まったところで、お主ら2人は部屋で休んでもらおうかの」 オスマンの言葉にルイズとギーシュは顔を見合わせた。 確かに今は夜だが、正直寝るにはまだ早い。 「今回の任務は時間との勝負になりますが、流石に今すぐ出発するわけには行きません。人目を避けて貰う必要もあるので出発は明日の早朝がいいでしょう」 アルビオンまではかなりの強行軍になる。少しでも体力を蓄えておいて欲しいというのがオスマンらの考えであった。 「取り敢えず服や私物の準備だけしておいて下さい。旅費や必要な物に関してはこちらで準備しておきますので」 「クロコダイン殿にはもう少し残っていて貰おうか。色々と打ち合わせておきたい事もあるでの」 そう言いながらオスマンは短く呪文を唱える。すると床の石材があっという間に2メイル程の屈強なゴーレムになった。その肩に一匹のネズミが飛び乗る。 「姫様もそろそろお部屋でお休み下され。このゴーレムとモートソグニルがお送り致しますでの」 そこでふとルイズが宝物庫から出ようとしていたギーシュに尋ねた。 「そういえばギーシュ、あんたどうしてわたしの部屋の前にいたの?」 当たり前の話だが、基本的に女子寮というものは男子禁制が掟である。 もっともいつからかその掟は形骸化の一途を辿っており、キュルケの部屋などは夜になると男子生徒がドアからも窓からもやってくる有様ではあったのだが。 が、それにしたところでギーシュがルイズの部屋を訪れる理由はない、筈だ。これがモンモランシーの部屋ならば話は別なのだろうが。 「ああ、今日はいつもの近接格闘訓練は休みだっただろう? 少し体を動かそうと思って外にいたら女子寮の前で人影を見つけてね」 そこでギーシュはアンリエッタの方を見て、一瞬口ごもった。視線に気付いたアンリエッタは無言のまま笑顔で続きを促す。 「うん、その、姫殿下付きの侍女だと思ったんだけど、動きが、こう何と言うか、明らかに『誰かに見られないようにしています』的な……」 端的に言うと『あからさまに不審者でした』という内容の事を出来るだけオブラートに包みまくるギーシュであった。 「で、後を付けてきたと?」 ルイズの確認にギーシュは「その通り」と答えたが、実は彼が女子寮に侵入した理由はそれだけではない。 ギーシュは不審者がアンリエッタであると一目で見抜いていたのである。 あまり知られていない事ではあるが、彼には『親しくなった女性のスリーサイズを正確に暗記できる』というレアな特技があった。 そのスキルを生かしてギーシュは不審者の体格が王女のそれと完全に一致しているのを見抜いたのである。 しかしギーシュは別にアンリエッタと親しい訳ではない。では何故彼は特技を発揮させる事が出来たのだろうか。 実は学院来訪時に王女が馬車から下りて学院内に入るまでの間、ギーシュは最前列で、その人生の中で最大限の集中力を発揮してアンリエッタの身体を食い入るように見つめまくっていたのである。 その甲斐あって、彼は初めて見た女性のスリーサイズを服の上から看破するという偉業を達成させたのだ。 もちろんそんな事を明かした日には速攻で斬首刑コースだろうという判断力は持ち合わせていたので口には出さなかったが。 「そういえば、オールド・オスマンもわたくしが部屋から出た事がすぐに分かった様ですが……」 ルイズに便乗するように尋ねるアンリエッタに、ふむ、とオスマンは長いひげを撫でながら答える。 「ミスタ・グラモンと同じ様なものですが、幾ら侍女に顔を変えても歩き方や体捌きが全く違っていましたからの。加えて言えば床に響く足音なども異なっておりましたな」 おお、と学生たちと王女は流石スクエアクラスの土メイジだと素直に感心した。普段はただのセクハラジジイだがやる時はやるものだ、と。 しかし、実の所オスマンが王女の偽装を見破った理由はもう1つあった。 全く知られていない事ではあるが、彼は『あらゆる女性のスリーサイズを服の上からでも瞬時に把握する』というレアというよりアレにも程がある特技の持ち主であった。 当然の事ながらオスマンは王女及び侍女たちの体のサイズを完璧に暗記していたので、部屋から出てきた侍女のプロポーションが明らかに違っている事にすぐ気付いたのだ。 ちなみにこの男、使い魔との感覚共有を生かしまくって女子生徒やメイドたちのスリーサイズも一人残らず把握していたりする。 伊達に齢100とも300とも言われてはいない、まさに男の夢をある意味体現しているメイジなのであった。 勿論そんな事を明かした日には超速攻でタコ殴りにされた上で拷問を受けた挙句に絞首刑コースだろう事は想像するまでもなく明らかだったので口には出さなかったが。 久し振りに尊敬の目で見られている事に感動しているオスマンを見て(うわネタばらししたい)と思うマザリーニであったが、一応は世話になった恩師であるし今はそれどころの話ではないので自重する。 「さ、それ位にして本当に部屋に戻って休んでください」 枢機卿の方が余程教師らしいのではないか、と思いつつルイズたちは宝物庫から退出して行った。 ルイズとギーシュはそれぞれ自室へと戻り、アンリエッタは護衛代わりのゴーレムと共に宛がわれた貴賓室へと向かう。 部屋の前で驚く魔法衛視隊の隊員には内密の会合があったと誤魔化して、彼女はベッドに座り込んだ。 勿論ゴーレムとモートソグニルは部屋の中にアンリエッタが入るのを確認して引き返している。 今彼女の脳裏に浮かぶのは白の国にいる想い人の顔と、久し振りに会った幼馴染の姿。 2人とも大切な存在なのに、1人は戦場と化した隣国で追い詰められており、もう1人はその隣国へ向かう事になった。 その理由が自分の不始末という現実に打ちのめされそうになるが、今更止められようもない。 だが、幾ら王宮で蝶よ華よと育てられた王女であっても、戦場に一介の学生が向かうのが危険だという事はよく分かる。 大人数で任務に赴くのは論外だが、せめてもう1人くらい腕の立つ護衛はつけられないだろうか。 そこでふとアンリエッタは学院に到着する前、馬車の中でのある出来事を思い出した。気分の優れない自分に花を手渡したグリフォン隊の隊長、ワルド子爵。確か二つ名は『閃光』と言ったか。 彼にルイズたちの護衛を頼むというのはどうだろう。 そうだ、幾らレコン・キスタのスパイが王宮内にいるとしても、枢機卿の腹心であるならばそんな心配もないに違いない。 それにマザリーニの説明によると、彼はかなりの実力の持ち主だという。子爵ならばきっとルイズの力になってくれる。 思いついた妙案をすぐに実行に移すべく、アンリエッタは扉の向こうに控えている護衛を呼ぶのだった。 翌早朝。 ルイズは普段ならまだ寝ている時間に起き、昨夜のうちに準備しておいた荷物を持って裏門へと向かった。 フーケ襲撃以降、学内の見回りは教師陣と衛兵がコンビを組んで絶えず行われていたが、この時間なら裏門はノーマークだという事を学院長から教わっている。 一応周囲を気にしてはいたが誰にも見つかる事なく、ルイズは裏門へと辿り着いた。 「やあ」 「おはよう」 そこには既にギーシュとクロコダインが待っていた。 クロコダインの隣には大きな革袋を乗せた馬が2頭用意されている。 革袋にはオスマンが大慌てで手配した路銀や携帯しやすい非常食、高価な水の秘薬などが入っているらしい。 魔法が失敗してしまうルイズは勿論、ギーシュも土のドットメイジであり、水系統の回復呪文ははっきりいって得手ではないが、それでも無いよりは有った方がいいというのが学院長の言い分だった。 「でも、どうして馬なの?」 つい先日、ワイバーンを仲間にした所である。どう考えても馬より早く目的地に着く筈だ。 実はルイズたちが寮に戻った後、オスマン、マザリーニとクロコダインの間で様々な打ち合わせが為されていた。 その結果、ここから馬で近くの森まで進み、そこからワイバーンで一気に進むという計画になったのである。 すぐにワイバーンを出さないのは、幾ら早朝とはいえあんなもん呼び出したら目立ちすぎるからだ。 港町であるラ・ロシェールに着いたらひとまず情報収集を兼ねた休憩を取り、フネの手配をする。 上手く予約できればそれで良し、出来ない場合は王女及び宰相連名の書類を使って徴用するか、ワイバーンで直接白の国へ行くも良し、との説明にルイズはなるほどと頷いた。 「先ずは急ごう」 短距離ならば馬と同じ程度の速さで駆けるというクロコダインに、しかし待ったをかけたのはギーシュだった。 「すまない、ぼくの使い魔も一緒に連れていけないかな」 「ヴェルダンデを?」 クロコダインが聞き返すのと同時にルイズの足下が突然盛り上がった。 短く悲鳴を上げるルイズに熊ほどの大きさのジャイアント・モールがのし掛かろうとし始める。 「ちょ、ちょっとギーシュ、アルビオンまでコレを連れていこうっての?」 「そうだよ、こう見えてヴェルダンデは馬並のスピードで土の中を進むことができるんだ」 「それはいいけど目的地はアルビオンよ、その意味分かってる? ていうか何でわたしに襲いかかってんのこのモグラはー!」 「……そういえば! ま、まあフネが確保できれば大丈夫だよ、多分。そうに決まってる。ていうかどうしたんだいヴェルダンデ、ルイズは君の大好きなどばどばミミズじゃないよ?」 さりげにひどいことを言うギーシュである。 「どうやらルイズの持っている何かに反応しているようだな」 クロコダインの分析にギーシュは思い当たる事があった。 「ルイズ、ヴェルダンデは君の持っている水のルビーに反応してるんだ。彼は光り物に目がなくてね」 「なくてね、とかノンキに解説してないで止めなさいよ!」 もっともな意見である。 確かにここで国宝に何かあったらぼくも死刑だろうしなあ、とギーシュが使い魔を止めに入ろうとした時、横にいたクロコダインが突然ルイズの元に走りグレイトアックスを抜いた。 「誰だ!」 突然の行動に驚くルイズたちの前に現れたのは、朝靄を吹き飛ばしながら舞い降りたグリフォンに跨る青年であった。 羽帽子に有翼獅子の紋章が縫い込まれたマント、魔法衛視隊の制服に身を包んだ美丈夫である。 「失礼、どうやら間にあったようだね」 青年は害意がないのを示すようにゆっくりとグリフォンから降り立った。 「魔法衛士隊が1つ、グリフォン隊隊長のジャン・ジャック・ワルド子爵だ。姫殿下より今回の任務に同行せよとの命を受けて参上した」 前ページ次ページ虚無と獣王
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7 ゼロと獣王 前ページ次ページ虚無と獣王 ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールの朝は、いつも遅い。 トリステインの貴族の多くは宵っ張りの朝寝坊をモットーとしており、大貴族の三女であるルイズもその例に洩れなかった。 そんな夜遅くまで、果たして彼女は何をしているのだろうか? 根が生真面目なルイズは、大抵の場合座学の予習・復習をしている。 因みに召喚の儀式の前には、最新の参考書から過去の学院生たちが召喚した動物の統計書類にまで目を通していた。 もっとも勉学だけではなく、たまに趣味の裁縫をしては結果として謎のオブジェを作成してしまったり、メイドに勧められた小説を読んで首まで真っ赤になったりもしている。 そんなルイズの朝は低血圧な体質も手伝っていつも遅いのだが、今日は様子が違っていた。 メイドの一声でベッドから跳ね起きるなど、かつてない異常事態であるといえよう。 異常事態の原因は、ルイズが召喚した使い魔にあった。 忌々しい二つ名を返上して余りある、誰が見ても褒め称える様な獣人。 今日の授業は生徒たちが召喚した使い魔のお披露目をする機会でもある。クロコダインを見て今まで自分を馬鹿にしてきた連中はどんな顔をするだろうか。 召喚魔法が成功した以上、他の魔法も使えるようになっている筈である。もう貴族とは名ばかりとか平民貴族などとは呼ばせまい。 ルイズはいたって機嫌よく制服に着替え、起こしに来てくれたシエスタに礼を言い、待っていたクロコダインと共に食堂へ向かった。 天気は快晴、いつもより早く起きたお陰で何かと煩い隣室の天敵(先祖代々)とは顔を合わせる事もなく、朝食のデザートは好物のクックベリーパイ。 今日のわたしはツイている! ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールの心は、希望と決意に燃えていた。 余談ではあるが、トリステイン魔法学院の歴史は古い。 そして、古い学校には真偽の知れぬ、怖い話やおかしな逸話が後を絶たない。 『二年教室の扉』も、そんな話の一つだ。 二年生に進み、始めて教室に入った生徒は、皆一様に同じ疑問を持つ。 「なんで一年の時の教室に比べ、二年の教室の扉はこんなにも大きいんだろう?」 確かに一年と三年の教室の扉はあくまで人間サイズなのに、二年の教室の扉は4メイル×2.5メイルとかなり大きい。 この件に関し教師陣は沈黙を守っているが、生徒たちの間にはこんな話が伝わっている。 ずいぶん昔、生徒の中にとても大きな使い魔を召喚した者がいました。 その生徒は使い魔を溺愛し、どこへ行くにも連れて歩こうとしましたが、しかし、大きな使い魔は残念ながら教室のドアを通る事が出来無ませんでした。 悲しんだ生徒は、そこで一計を講じました。 その生徒は裕福な貴族だったので、実家で土のメイジを複数雇い、錬金と固定化を駆使して扉を大きくさせてしまったのです。 次の日、学院は生徒を放校処分としました。始祖に連なる王家から賜りし学院を勝手に改造するとは何事か!というわけです。 生徒は実家へ帰り、後には大きな二年の教室の扉だけが残されたといいます。 ルイズは一年の時この話を聞いて、「ホントかウソか知らないけど、下らない貴族がいたものね」と思った。 朝食後、二年生に進級してクロコダインと扉を通った時、「ホントかウソか知らないけど、裕福な生徒グッジョブ!」と思った。 そして今──── ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールの心は、絶望と悪意に沈んでいた。 こんな筈ではなかった。断じて、こんな筈ではなかったのだ。 授業が始まる前、クロコダインを連れたルイズを見て、同級生たちは驚いていた。 実際のところ、自信に充ち溢れたルイズを見て驚いたのか、召喚の儀式の時は別の場所にいたので初めてクロコダインを見て驚いたのか微妙なところだったが。 クロコダインが教室の後ろに立つと、周りにいた使い魔たちが一斉に彼の方を向き、声を合わせて一度だけ吼えた。 その光景を目撃したキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは後に語る。 まるで王を前にした魔法騎士団が杖を掲げているようだった、と。 授業が始まり、シュヴルーズ教師も立派な使い魔を召喚したと褒めてくれた。 いつもならここで野次の一つや二つ飛んでくるのだが、やたら使い魔たちに懐かれているクロコダインが気になるのか、小太りの生徒も沈黙を守っていた。 ここまでは良かった。 錬金の実践を言い渡された時、ルイズは不安を感じなかったと言えば、それは嘘になる。 失敗したらという思いが心をかすめ、しかしルイズはあえて前を見た。決して後ろは見せない、それが貴族だと彼女は信じていたからだ。 ルイズは完璧な発音で呪文を読み上げ、己の全ての魔力を注ぎこみ────結果として大爆発を引き起こした。 シュヴルーズ教師は気絶、周囲への被害は甚大、ルイズ自身は教室の後ろから跳んできたクロコダインのお陰か怪我はないものの、 沈黙していた分反発の大きな同級生たちの罵詈雑言正論ツッコミその他の声でそのプライドはズタズタになっていた。 授業は自習に変更となり、ルイズには罰として魔法を使わずに教室を片づけるよう言い渡された。魔法の使えないルイズにはあまり意味のない条件だったが。 少女は魔法を使えない自分を呪い、始祖ブリミルを役立たずと罵倒し、黙々と教室の片付けに勤しむ自分の使い魔を見て、深く落ち込んだ。 そして大きな扉を睨みつけ、あの扉が小さければこの醜態を使い魔に見られずに済んだのではないかと思い、「ホントかウソか知らないけど、いらん事すんなバカ生徒!」と八つ当たりをし、再び深く深く落ち込んだ。 いかに心の広い者であっても、今回の失敗で呆れたのではないか。 もし、自分が使い魔だったとしたら、仕えるのは有能な相手がいいと思う。 爆発の後、ルイズに無事かと言ってから、クロコダインが沈黙を守っているのが怖かった。 ひょっとして内心では、魔法の使えない主人に愛想を尽かしているのではないか?いいやそうに決まってる、だってわたしだったらイヤだもの! 生真面目で感情の起伏が激しいルイズは、自虐と疑心暗鬼のデフレスパイラルに陥っていた。 重苦しい雰囲気の中、沈黙に耐えきれなくなった彼女が自暴自棄になった心情を吐露しようとした瞬間。 クロコダインが、その口を開いた。 「ひとつ話をしてもいいか?オレが以前知り合った、2人の魔法使いの話だ」 ルイズの沈黙を許可と受け取ったのか、クロコダインはそのまま話し始めた。 「1人はかつてオレと同じ陣営にいた魔法使いだ。その男は圧倒的な魔力と他人には扱えぬ強力な魔法で、同僚からも一目置かれていた存在だった。 軍団長にまで上り詰めたそいつは、しかし決して前線には出ようとしない男でもあった。 欲と復讐心を煽って同僚を動かし、卑劣な策略をもって敵を罠に嵌め、部下を使い捨ての駒として扱い、実の息子に愛情を注ぐ事もなく実験動物の様に扱った。 自分が生き残る為にかつての上司ですら不意打ちにしたその男は、全く自分を磨こうとはせず、常に安全な位置から謀略を巡らせていた。 その結果誰からも信用されず、同僚からも見捨てられ、強大な力を振るおうとしてそれ以上の力に敗れ去った。 最期は自分が散々利用し、馬鹿にしてきた男にすらその策を見破られ、惨めに死んでいった」 「…………」 「もう1人の男は、どこにでもいるような少年だった。強大な魔力を持っている訳でもなく、特に秀でた力もなく、自分より強い敵に遭ったらすぐさま逃げ出す様な男だった。 だが、そいつは1度は逃げ出しても、なけなしの勇気を振り絞り、友を救う為に戦場に舞い戻った。 自分の力では敵を倒す事は出来ないと知りつつも、友が全力を出せる様に命懸けで敵の策を打ち破って、仲間と協力する事で勝利を掴み取った。 その後も精進を怠る事無く常に最前線に身を置き、最後の最後まで勇者の相棒として戦い続け、勝利をもたらす原動力ともなった。 唯の平民の出でありながら、敵味方を問わずその実力を認められたその男は、若くして大魔導士の称号を得るに至ったのだ」 「…………」 「主どの。いや、ルイズ。お前にはゼロという二つ名が付いているが、これからもずっとゼロのままだとは限らない。 今まで通りの生活でゼロと呼ばれるか、何かを積み上げ続ける事でプラスとするか、何もかもを諦めマイナスにするのか、全ては自分次第だ」 「……………………」 ルイズは、先刻のクロコダインの様に沈黙を守っていたが、その心中は激しく動いていた。 全く、わたしは、なんという使い魔を召喚してしまったのだろう? 人語を解し、歴戦の戦士で、主人が落ちこんだ時には的確な助言をくれる使い魔など、見た事も聞いた事もない。 彼がくれた言葉を、わたしは生涯忘れる事はないだろう。 今まで歩んできた暗く長い道に一条の光が射し込んだ様に思えてならなかった。 知らないうちに目から涙が溢れていた。 これまで、二つ名は自分を縛る鎖でしかなかったが、これからは違う。 何もないという事は、何にでもなれるという事を教わったから。 ルイズは凛とした笑顔で杖を掲げ、己が使い魔にこう宣言した。 「ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールが今ここに誓う。わたしは、貴方が誇りに想う様な立派な主となると!」 フェオの月、ティワズのエオー。この日はルイズにとって記念すべき日となった。 頼りになる使い魔は彼女が尊敬すべき師となり、同時にその道を照らす太陽となったのであった。 前ページ次ページ虚無と獣王